25部分:第二十五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第二十五章
そうしてであった。小田切君はそこに見ていたのだった。弓矢の秘密を。
「氷は溶けるよな」
「ああ、それはな」
「元は水だしね」
ライゾウにとってもタロにとっても今更といった言葉だった。普通に言葉を返す。
「んっ!?そういえばよ」
「あの氷って」
ここで彼等も遂に気付いたのだった。
「全然溶けないぞ」
「何で?炎に近付いているのに」
「それなんだよ」
小田切君が見ているのはそこなのだった。
「ほら、全然溶けていないじゃない」
「だよなあ、本当に」
「普通の氷なら絶対に溶けるどころか蒸発する温度なのに」
「だからただの氷じゃない」
またそこを指摘した。
「そうだね。あれは」
「あれは?」
「どんな氷なの?それで」
「絶対零度の氷だよ」
それだと言うのであった。ここでもやはり断言であった。
「あれはね。絶対零度の氷だよ」
「絶対零度の氷か」
「それを放ったんだ。博士って」
「そうだよ。あれならまず溶けない」
絶対零度ともなればだ。それこそ生半可な炎では溶けたりはしない。博士はヒデヨシが白い炎を出してきたのであえてそれを出したのである。
「博士だからこそできることだね、あれは」
「悪い意味で、だけれどな」
「同感」
タロは相方のライゾウのその言葉に頷いた。
「あんなことばっかりできるのってよ」
「絶対零度なんてそう簡単に実現できないからね」
「さて、その絶対零度の弓矢だけれど」
小田切君は冷静に見続けていた。闘いの成り行きを。
「果たして白い炎に効くかな」
「おのれ、只の氷ではないと思っていたが」
「やっと気付いたようじゃな」
ヒデヨシの顔に歯噛みするものが浮かんできていた。そうしてそれとは正反対に博士の顔は満面の笑みだった。勝利を予感していることがわかる。
そのうえでだった。博士はさらに弓矢を放つ。それと共に叫ぶ。
「止めじゃ!」
「おのれ、まだ撃つというのか!」
「わしの辞書に容赦という言葉はない!」
他にも色々な人間として必要な文字が欠落している博士であった。
「それは知っている筈だがな」
「知っているが覚えるつもりはない」
ヒデヨシも堂々と言い返す。歯噛みしている顔ではあるがそれでも負けている顔ではないのだった。
「それは言っておく」
「言わなくてもよい」
博士も博士でそんな言葉を聞くつもりはないのだった。
「こっちも聞くつもりはないからのう」
「左様か。それではじゃ」
「また仕掛けたぞ、あの猿顔!」
「今度はあれか!」
ローマ市民達の絶叫の中で火の鳥は羽ばたいた。それと共に放ってきたのは無数の白い羽根であった。それを無数のロケット弾のようにして放ってきたのだ。
「氷の矢に炎の矢」
「それの衝突なんだ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ