クリスマス 間男編
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にボロボロの精神状態で真実を押し込めているこの男に更に追い打ちをかけてしまい、ヘタレそうだからまぁ、まずないとは思うが、場合によっては、いやだぁあぁぁとか叫びながら隠し持ったナイフか何かで滅多刺しにされる恐れがある。
後者を選んだ場合:ストーカー爆誕の予感。ゴミ袋漁るくらいで済みそうな気もするけど、場合によっては隣の彼女がおぐわぁあぁぁとか叫びながら隠し持ったナイフか何かで滅多刺しにされる恐れがある。
…隣の子には申し訳ない。が、俺とてこの訳の分からない状態に付き合わされて負傷までする義理は、ない。そもそもこのモテなそうな男が「付き合っちゃう?」とかほざき始めた時点でゴミ虫でも見るような視線でも送っておけば、こいつとてこんな拗らせ方をせずに、孤独なクリスマスを粛々と受け止めただろうに。思わせぶりな態度を取った隣の子が悪い。そうだ、俺は悪くない。俺は。
「―――いやお前、付き合ってないよ。最初から」
気づいたら口走っていた。…俺は思い出していた。エレベーターの中で鉢合わせた、隣の子の幸せそうな笑顔を。白いコートの裾をくるりと翻して乗り込んできた彼女に続いて入ってきた、イケメン彼氏を。何故だか、俺は。
「――う…うぅうぅぅ…うぅぅわ……」
蓑の男が声を震わせながらぎりぎりと歯ぎしりを始めた。うっわやべえ、これ滅多刺しのパターンだ。俺は軽く後悔し始めていた。…男はなまはげの仮面を拾いあげ、徐にかぶりなおした。
「お、おい落ち着け、俺なんか刺しても、な、ほら」
「ぅぅ悪い子はいねぇが―――――!!!」
やおら喉も裂けんばかりの雄叫びをあげると、蓑男は発泡スチロールの包丁を高々と掲げて、俺の周りで素早い反復横跳びらしき動きを始めた。奴がスライドする度に仮面の黒髪がうねる。うっわ怖、なまはげ近くで見ると意外と怖ぇ。
「ちょ、待」
「悪い子は―――――!!!!」
発泡スチロールの包丁を高々と掲げ、俺の頭上に振り下ろす。何度も振り下ろされるが、その度にぽこんぺこんと間抜けな音がした。無論、全然痛くない。ただ叩かれる度に、羞恥とも憐憫ともつかぬ奇妙な感情が、じわりじわりとへその真ん中あたりを満たしていく。
「悪い子は―――――!!!!」
「悪い子は―――――!!!!……悪い、子は」
全ての力を使い果たした蓑男は、再び包丁を落とした。
「――悪い子なんて、最初からいなかったんだ。いたのは間抜けな大人、だけだ…」
―――おい。
「なんかお前、今俺もついでに間抜けな大人のカテゴリーに入れただろう」
「……え」
「クリスマスに何の予定も、残業すらなく、町に繰り出せばカップルの群れに心折れること必至だから閉じこもって聖夜をやり過ごそうと思っていたらなまはげの襲撃に遭い、俺には爪の先ほども
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