クリスマス 間男編
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て聖夜に、アポなしで、女子の部屋に、妖怪の扮装で乱入しようとした、と」
「………」
浮気する女も大概だが、そんなこと予告なしでされるというのも最悪な話だな。今日のことがなくても、こいつ遅かれ早かれ…いや、その前に。
「良かったな、悪い子いたじゃねぇか。壁の向こうに」
「うぅっぐぅううう…!」
本格的に泣きに入った。最悪だ。ご近所さんに俺が泣いてると思われる。
「………あぅぁー………」
泣き方に張りがなくなってきたあたりで間髪をいれず発泡酒を渡す。蓑男はプルタブを起こし、背を丸めたまま発泡酒をすすった。…酒蔵に出る妖怪みたいだ。
「――初めての彼女だったのに」
「あんたが告白したのか」
「告白…ってか会社の飲み会で」
奴がぽつりぽつりと語り始めたことばを要約すると、こうだ。
会社の飲み会で、酔った勢いで笑いながら『なになに金沢さんのアパート俺の近所なのー?じゃ俺たち付き合っちゃうー?』と云ってみたら、ハルミちゃんが『えーいいですねーあははー』と云った…らしい。
「えっと、そんだけ…?」
これって、あれだよなぁ…やっぱり。
「そ、そのあと素面の時に『ハルミちゃん』て呼んでも嫌な顔されませんでしたよ!」
「他にハルミちゃんて呼んでる社員は」
「…ほぼ皆」
「…なぁ、あんた」
「ランチも一緒に行きましたよ!!」
「2人でか」
「彼女と!…その、友達と」
「ランチ代は」
「………」
男の表情を見るに忍びなく、開けっ放しの玄関に戻り、ドアを閉める。足元に正方形の柔らかな箱が落ちていた。プラスチックの板が挟まれた小さな窓から、崩れたクリームと苺が可愛らしく覗いている。…居たたまれない。
「……それ食いますか」
「ホールで買っちゃったのか、こんなでかい奴を」
「はい!い、一番でかいのを!ちょっと奮発して!!」
箱には『ヤマザキ』と書いてある。
「女の子って甘いものが好きでしょう!?だ、だから俺!!」
だから、俺…特別でかいケーキ丸ごとプレゼントしたら喜ぶかなって俺……ごにょごにょ呟きながら、男は再び俯く。…居たたまれない。発想がもう純朴で愚鈍な田舎の若者だ。流石は代々なまはげやってる家系というか。
「い、いやぁ…浮気ってあるもんなんですね…ははははは」
震える声で呟きながら、男が顔を上げた。はははとか言っているが、目が笑っていない。ちっとも笑っていない。
「お、おう……」
浮気をされた、そういう方向でのクロージングに入ろうとしている。…どうしよう。
俺の前に、2つの選択肢が横たわっている。
@ いやいやお前、彼女そもそもお前と付き合ってないよ!と正直に諭す
A そうだね、酷い女だったね、ご愁傷様。と話を合わせてその場を凌ぐ
前者を選んだ場合:既
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