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戦国異伝
第二百五十一話 周防の戦その十二

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「そしてな」
「最後の最後で、ですな」
「織田信長を倒し」
「幕府の軍勢と消し飛ばし」
「勝つ」
「そしてこの国を闇に落としますな」
「闇じゃ」
 老人は血走った目でこうも言った。
「神武東征の時は覚えておろう」
「はい、我等を攻め」
「そして住んでいた場所から追い出しました」
「我等をまつろわぬ者とし」
「そのうえで」
「生贄を使ってこそ」
 彼等の術のことも言うのだった。
「最高の術が使え力を出せる」
「はい、まさに」
「それが出来ます」
「それを理解せずしてです」
「神武は我等を攻めてきました」
「そしてその地から追い出しました」 
 こう苦々しい顔で言うのだった、そしてだった。彼も他の棟梁達も他の魔界衆の者達も全てだった。逃げてしまった。
 残ったのは傀儡だけだ、だが。
 彼等は戦い続けた、その囲まれた中で。
 長政は鉄砲を放たせる中でだ、こう言った。
「妙じゃな」
「はい、敵の動きがです」
「急に鈍くなりました」
「まだ反抗はしていますが」
「ただ戦っているだけの様な」
「そんな感じになっていますな」
「これはじゃ」 
 闇の軍勢の動きがそうなったのを見てだ、長政はこうも言った。
「もうじゃ」
「采配を執る者がですか」
「いなくなった」
「だからですか」
「敵の動きが鈍くなった」
「そうなったのですな」
「采配のない軍勢なぞ」
 長政はそうした軍勢についてこうも言った。
「所詮はな」
「はい、ただいるだけ」
「烏合の衆に過ぎませぬ」
「所詮はです」
「それに過ぎませぬな」
「見ればな」
 ここでだ、また言った長政だった。
「倒れている者達もな」
「傀儡ですな」
「そればかりになってきましたな」
「撃たれて倒れる者は」
「まさに」
 浅井家の家臣達も言う、見れば確かにだった。
 魔界衆の軍勢はだ、誰もがだった。
 倒れれば木の枝だの札だの人形だのになっていた。そうした者達だけが倒れる様になってしまっていた。
 それを見てだ、長政は言うのだった。
「逃げたか」
「上様が仰る様に」
「そうしてきましたか」
「うむ、どうやらな」
 こう言うのだった。
「あの者達は逃げたわ」
「では、ですか」
「この戦場で残っているのは最早傀儡のみ」
「敵は傀儡を残して逃げた」
「そうなりますか」
「どうやらな、ではあの者達と長く戦ってもな」
 そうしてもというのだった。
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