第二百五十一話 周防の戦その七
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「あの者達を叩くぞ」
「そして討ち漏らしても」
「海じゃ」
そこでというのだ。
「海に逃げるからな」
「その海で、ですな」
「滅ぼすぞ、よいな」
「手筈通りに」
「進めていく」
こう言うのだった、そしてだった。
信長は先陣を退かせていった、そして。
先陣は後詰を置いたまま退いていった、後詰も敵を振り切ってだった、その後は弓矢がぎりぎりで届かない距離を保ちつつだった。
逃げていた、その彼等をだった。
魔界衆は追っていた、老人も今は本陣を出て軍勢の中にいて言っていた。
「何としてもじゃ」
「はい、先陣を再び捉え」
「そして、ですな」
「織田信長を討つ」
「そうしますな」
「そうじゃ」
まさにという返事だった。
「わかったな」
「ですから全力で」
「今も追っています」
「何としても捉えます」
「絶対に」
「そうせよ、何としても捉えよ」
そのことのみを見ている言葉だった。
「ここで織田信長を討てば我等の勝ちじゃ」
「その通りです」
「それではです」
「何としてもです」
「織田信長を捉えます」
「そして討ちます」
彼等はとかく信長のみを見ていた、先陣の軍勢はそのついでだった。まさに彼を全軍で脇目も振らす追っていた。
信長は軍を休ませず退かせていた、そして。
ある場所に来た時にだ、池田と森に言った。
「ここじゃ」
「ですな、こここそです」
「その場ですな」
二人は信長に確かな声で答えた。
「ではこれより」
「法螺貝をですな」
「吹かせよ、攻めを知らせるじゃ」
まさにというのだ。
「その音を思う存分な」
「吹かせます」
「これより」
「見事にかかったわ」
信長は笑っていなかった、しかし後ろを確かに見据えていた。
「これで奴等は終わりじゃ」
「既にですな」
「敵は囲まれていますな」
「ならばです」
「勝つのは我々ですな」
「そうじゃ、我等じゃ」
まさにという返事だった、今の信長のそれは。
「我等の勝利のはじまりの法螺貝を吹くのじゃ」
「わかりました」
二人も応えてだ、そしてだった。
先陣から法螺貝が吹かれた、その法螺貝を聞いて魔界衆の軍勢は何故ここで吹くのかと思った。だが考えたのは一瞬のことだった。
その一瞬後にだ、彼等の周りにだった。
屏風が次々と立てられる様にだ、様々な色の旗と具足の軍勢達が出て来てだった。
鬨の声と共に襲い掛かって来た、その場を埋め尽くす様な大軍だった。
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