第十五話:罪纏う神裁の剣
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ってか、その身を再び起こすことは叶わない。
それでも、目の前の少女に危機が迫っていることは分かった。叫ぼうとして、しかし声が全く出ないことに気づく。
ユメがそれに気づいた時はもう手遅れだった。スキル使用後の硬直から復帰した禍ツ神の大刀が、ユメに向かって振り下ろされていたのだ。
『■■■ーーーッ!!』
回避も、防御も間に合わない。ユメに出来たのは、目を見開くことだけだった。
だが何時だって。そのどうしようもない絶望を、己の身一つだけで覆してきた男がいた。
別に、その男が特別だったという訳ではない。ただ一つ。彼には、彼を構成する強固たる意思の力があるのみだった。
だからこそ強い。だからこそその魂は砕けない。
何時だって、その男は英雄の如く。
「是、射殺す百頭ッ!」
先程の禍ツ神の一撃を上回る、正真正銘、世界を断ち切る九連斬。その絶技に断てぬ物は無し。己の身に走る激痛に表情を歪めながら、しかし、今度も男は護りたいモノを護ってみせた。
護る為ならば、黄泉の淵からでも、冥界の門からでも戻って来る。誓いを果たす為ならば、地獄の番犬すらも斬り裂いてみせよう。
「?????ありがとう、二人とも。後はオレに任せてくれ」
終世を誓った英雄は、何度でも立ち上がってみせるのだろう。
† †
「かッ……は…」
全身が焼付くように熱い。
脳の許容量を超えた痛みが熱に代わってオレの意識を塗り潰そうとしている。
今、この仮想の肉体は熱に支配されていた。ただ熱い。只管に、狂いそうな程の熱を感じるのみだ。
それが逆に、まだオレは生きているのだと実感できる。
それだけで十分だ。この体が世界に繋ぎとめられている限り、まだオレは戦うことができる。
視界が狭く、暗い。
?????ああ、右目が潰れたか。
剣戟が遠く聞こえる。
?????恐らく、聴覚が逝かれたのだろう。
左手に何もないな。
?????どうやら斧剣は落としてしまったらしい。
「だから、どうした……!!」
右目が潰れたなら左目を見開け。
聴覚が逝かれたなら他で補え。
剣がないなら取り出せばいい。貯蔵なら幾らでもある。だが、ここで握る剣は決まっていた。
「来い!」
その剣は罪の証。罪の結晶。
仲間の血に塗れた、忌まわしい漆黒の剣。それでも。いや、だからこそ、今この瞬間に相応しい。
「……投影開始」
容赦なく叩き込まれるのは、この剣に刻まれた罪の記憶。オレが殺してきた者達の最期。
今まで、この記憶を恐れ避け続けてきた
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