四十話:戦況
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人質の優位性が無くなれば犯人に勝ち目などない。
それを十二分理解しているからこそのフェイトの発言である。切嗣はあの少女が良く成長したものだと考えながら脱出のための計画を立て始める。既に切嗣の頭にはまともに戦うという考えはない。不利になれば逃げる、それだけである。
「大人しく捕まってください。あなたも、もう何の意味もないことだとわかっているはずです」
「……黙れ。僕が止めない以上はこれは意味のある行動だ」
「間違いは正すことが出来ます。やり直すことだって不可能じゃない」
フェイトの説得に対して敵意をむき出しにして反論する切嗣。確かに切嗣が今なお人を傷つけ続けているのは間違いとだろう、意味のない行為だろう。だが、切嗣だけはそれを認めることが出来ない。自分がそれを認めてしまえば今までの犠牲を踏みにじることになる。それだけは認めることが出来なかった。
「もう、何もかも遅すぎる。僕は僕の方法で世界を平和にするしかない」
「あなたのやり方で世界が平和にできないのはあなた自身が分かっているはずです!」
「……いいや、方法はある。僕の願いを叶えることは不可能じゃない」
そう言い切る切嗣の深淵の瞳に底知れなさを感じ、思わずなのはとフェイトはひるんでしまう。一体何を見つけたのかは二人にはわからなかった。しかし、二人には切嗣が願いを叶えられるというのに欠片も喜んでいないということだけは分かった。
本当に願いが叶う間近だとしても喜びの表情が欠片も見えてこない。また、望まぬ何かを行おうとしているのではないかと勘ぐってしまうのは仕方のないことだろう。
「何をやるつもりなんですか?」
「敵が計画の内容を教えるわけがないだろう」
「はやてちゃんにもですか?」
はやてという言葉が出てきた瞬間にこれでもかとばかりに表情を歪める切嗣。その様子からは彼が娘のことを割り切れていないことがありありと見て取れた。なのははそこに希望を見出しさらに声をかけていく。
「なぜ、ここではやての名前が出る。僕はあの子のことなんてどうとも思っていない」
「うそだよね。だってあなたは―――はやてちゃんのお父さんだもの」
なのはの言葉にフォワード陣が全員息を呑む。一方の切嗣は何かを言い返そうとして口を開けては何も出てこずに口を閉じるという行動を繰り返す。あの頃に比べて随分と脆くなった。体は機械のように動いてはくれずに感情が先走り物事を完全に隠すことが出来ない。だが、それでも、彼は誤った道を歩き続けなければならないのだ。
「会いに行ってあげてください! はやてちゃんは待ってます! はやてちゃんに会えば何かが変わります!」
「確かに……はやてなら何かを起こすかもしれない。でも、そうなるわけにはいかないんだ」
「もう悲しい
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