5月12日 放送部の撮影
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放課後、慌てた様子で、由紀が走って、理科室に入ってきた。
「今日は放送部が撮影に来るみたいだよ。文化祭のPV撮影だって!」
「え!?聞いてないよ、そんなの」
私は思わず口に手を当てた。才茂くんは舌打ちをする
「似非のやつ、総理研が気に入らないからって・・・・」
みんなは、焦りの表情を浮かべ、俯く。ただ、一人、覚元くんを除いては
「今からでも、できることはあるだろ」
「覚元、お前は言うばかりで何もできないくせに」
才茂くんと覚元くんはにらみ合い始めた。どうしよう、そう思っている間に、善田くんが間に入った
「ぼ・・・・僕が何とかします。僕が、黒板に絵を書くよ。総理研っぽい。その前で、実験の道具を持って、白衣を着て、セリフを言う、これだけで十分成立するはず・・・・」
すると、善田くんは、チョークを手に持ち、黒板に絵を書き始めた
白、赤、青、緑、黄色・・・・5本のチョークを使い、サラサラと描いていく
そのスピードは異様なもので、さらに、顔は、いつもの弱々しさはなく、凛々しかった
5分も立たずに出来上がったその絵を見て、私たちは歓声を上げた
真ん中に、筆で書いたかのような字体で書かれた、総理研の文字、その周りに色とりどりの花
そして、文字の上には、満天の星空が描かれていた。リアリティあふれる絵。素人が書いたとは思えない
「すごいね、善田くん!」
私が善田くんに駆け寄ると。いつもの善田くんらしく、メガネを少し上げて、でも、今回ははにかんだ
「えぇ、でも、暇だったからよく絵を書いていただけなので、そんなにすごくないです」
得意なことになると、表情が少し明るくなる。そういえば、文化祭の案を出すときも、たまにこんな明るい顔してたっけ
「よし、善田くんのおかげで、あとはセリフを言うだけだよ!みんな白衣着よう!善田くんが描いている間に、セリフ考えたんだ!そんな大したセリフじゃないけど」
「おぉ、準備いいな。じゃあ軽くリハーサルするか」
軽そうに、だるそうに、でも、才茂くんの顔は少し笑っていた
きっとうまくいくよ。このメンバーなら、どんなことも・・・・
「失礼しまーす、放送部の撮影に来ましたー」
まるで見下したかのような目と口調。似非がやってきた。三脚とビデオカメラを持って、いかにもカメラマンといった感じだ
「あー、今日撮影だって、言ってなかったのに準備できたんだ。裏切る気か、最上」
「は?何が裏切るよ。私はどっちの部活も裏切る気はない。それに、そうやって総理研を見下してるの、あんただけじゃない。そろそろ、周りから痛い目で見られてるって気づいたら?それに
私の言ったこと忘れたの?あなたは、この学校でうまくやりたいんでしょ?
すると、似非くんは表情を曇らせ、舌打ちをした。しぶしぶ「撮影はじめまーす」と、本来の仕事に
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