10部分:第十章
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第十章
「気にすることはない」
「だがこの宮殿は多くの民達の苦労もあり金も時もかかっておる」
ベルサイユ宮殿の建築はかなりの難工事であった。しかも費用は莫大なものであった。ルイ十四世はここにオレンジの木を植えようとしてそれもまた出費になってしまっていたのだ。そして完成までに二百年かかった。やはり途方もないものであるのだ。
「それを壊させるわけにはいかん」
「あれっ、太閤様っていい人?」
「にしか見えないよね」
タロとライゾウは二人のやり取りを聞いてこう思うのだった。
「何か話聞いてたらよ」
「博士が悪役なのは当然だけれど」
これだけは確かなことだった。博士が悪役なのは。
「教科書とかだと暴君に書かれてたりするけれど」
「実際は違うのかな」
「そうかもね」
彼等に答えたのはやはり小田切君であった。
「何度も言うけれど教科書は嘘も多いから」
「教科書に嘘多いってまずいんじゃないのかい?」
「そうだよ。子供達は皆教科書を信じるものなのに」
「そこに嘘を入れて洗脳する方法もあるんだよ」
小田切君の言う現実はかなり暗いものであった。何が一番暗いかというと小田切君の言っていることが紛れもない真実だからである。
「それは政府がするよりも」
「あれっ、所謂国家権力じゃないのかよ」
「そうじゃないの」
「特定の思想を持った教科書の製作者や協力者が問題なんだ」
小田切君は彼等こそが問題だというのである。
「そうした人達がね。教科書に変な思想を持ち込むから」
「ああ、そういえば侵略を進出と書き換えたとか」
「そんな事件があったんだったね。虚報だったけれど」
そうした事件が実際にあった。それにより日本が被った実害は途方もないものだった。この虚報を最も大々的に報道したある新聞社は何の謝罪もしていない。それどころかそれ以降も何度も意図的としか思えない虚報を流し続けている。そういうこともあるのだ。
「それから教科書が変になったんだよ」
「まあさ、学校の先生とかっておかしな人多いけれどね」
「実際のところね」
彼等もこのことは知ってはいた。
「っていうか人格障害者が異常に多いっていうか」
「変なイデオロギーに染まってる人も多いんだ」
「それもかなりね」
小田切君の返答はこれまで以上に暗いものとなっていた。
「なってるんだよ、だからさ」
「教科書は信用できないのかよ」
「それでなんだ」
「そういうことなんだ。まあ僕もさっき博士に言われたけれどね」
ぼやいたような言葉を出しながらその博士を見上げての言葉だ。
「教科書はそのまま鵜呑みにしたら危険な場合もあるんだ」
「そうなのかよ」
「難しいね、その辺りは」
「難しいよ、本当に」
小田切君の言葉は続く。
「ちゃんと考えていかな
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