43.証拠不十分
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本人ではないだろうな。あの白骨死体の身元は状況証拠からしてウィリス本人だろう。部屋の合鍵は作られていないし、肝心の鍵は彼の腐った衣服の中に入っていたよ」
「……………………」
カースは呆然と床を見ている。まるで状況を処理できていないのか、あまりのショックに言葉が出なくなっているようだった。
そして、ヨハンはまだ彼に重要な事を伝えてない。今回のこれはあくまで『ウィリスの死因を究明する話』であり、彼はまだ自分を殺そうとしたのがアルガードであることを一言たりとも聞いていないのだ。
そんな残酷な現実が待ち受けている事も知らず、カースは記憶を整理するように、ぽつぽつと言葉を漏らした。
「他の連中は知らなかっただろうが、俺は知ってた。ウィリスが黙ってるんなら俺も墓まで持って行こうと……」
「何をだ」
「………『武器は完全だった』んだ。あいつが死ぬ必要がどこにあった……!!」
「………ちょっと待て、それは――」
「『舞牡丹』の剣は、あの時俺の担当だった。でも俺はその剣が誰のか直ぐに判ったから、こっそりウィリスと話し合って整備する剣をすり替えた。だから、『舞牡丹』が受け取った剣は、ウィリスがミスなく完璧に仕上げた剣だったんだ」
「馬鹿な。ヘラ・ファミリアとウルカグアリ・ファミリアはそれで騒ぎを起こし、ギルドの調査が入った!!そんな話は報告書にはなかったぞ!!」
「ああ、なかっただろうよ」
ふっと自嘲気味に笑ったカースは、真実を口にした。
「なにせ、『証拠がなかった』からな………俺とウィリスが作業を入れ替えたなんて帳簿には載ってない。そしてその頃、うちのファミリアでは改造時に強度が落ちていないかのチェックを行っていなかった。だから、立証されなかったんだ。それに、下手に事実を明かせば立証も出来ないままウィリスにだけ疑いの目が向けられる………あんた、自分の同僚を余所に売るか?」
「……納得した」
ギルドは今も昔も事件調査では証拠主義を取っている。だから事実が帳簿に残っておらず、強度チェックがされておらず、事実として剣が壊れていた場合、状況証拠と掛け合わせれば「ウグカグアリ・ファミリアの責任」となるのは事実だ。
「すると、なにか………あの事件は『舞牡丹』が普通に戦って死んで、その責任の所在をお前らに押し付けた……そんな事件だったというのか?」
「知るかよ。そうでもしないと怒りが収まんなかったのかもしれねぇし、あっちの神が慰謝料ぼったくる為に態と煽ったのかもしんねぇ。真相なんて……分かるものかよ」
ヘラ・ファミリアはとうの昔に壊滅し、主神は行方知れずになっている。当事者は恐らく全員がダンジョン内で死亡済み。ヘラ・ファミリアの所有していた土地や屋敷は軒並み売りに出され、冒険者の私物は金目の物を除いてすべて焼却処
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