43.証拠不十分
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あッ!!ほ、ほ、骨ぇ……人間の骨ぇぇぇえええッ!!」
そこには、ミイラと白骨の中間を彷徨う一つの亡骸が、首を吊った形でぶら下がっていた。
数分後、部屋にぽつんと残された日記帳に目を通したアズは、部屋を飛び出した。
直後、街に巨大な声を響かせる少年の罵声と地響きが起きた。
= =
某月某日
終わりを感じる。終焉だ。職人として、男として、もう俺には生きる意味が見つからなくなってしまった。食事さえ碌に喉を通らず、ウルカグアリ様に心配されてしまった。俺達の所為でファミリアの信頼だって大きく傾いたはずなのに、それでもウルカグアリ様は俺達の事を気遣ってくれている。その優しさが、今の俺達にとってはどうしようもなく辛い。
アルガードは、あれからまるで感情のない人形のような顔でひたすら工房に籠り、絶えず何かを作っている。その形相には狂気すら感じ、他人の声も碌に聞こえていないようだ。迸る衝動を処理できず、ひたすらに無我の境地に逃げ続けているのだろう。
俺も同じことをすれば気が休まるかと思い仕事道具の鎚を手に持つ。だが、原料の金属を持つ手が震えて止まらず、結局何も出来なかった。
俺達のこの手が、ピオを殺した。
彼岸の向こうへ。手の届かぬところへ。いや、死ねば届くか。
俺は自分の浅はかな考えを嗤った。ピオを殺す原因を作った男が、ピオと同じ場所に行けるものか。
某月某日
ファミリアを辞めた。ウルカグアリ様は止めなかった。ただ、とても悲しそうな目で、逃げ場が欲しくなったらいつでも来なさい、と囁いた。敏いお人だ。同時に慈悲深くもある。無理強いはされていないが、俺はその言葉を聞いた時に心が揺れるのを感じた。生きるのが辛くなったら逃げ場になってくれると、かの神は言うのだ。
だが、俺はもう準備を始めている。恐らくこれがウルカグアリ様と俺の末期の逢瀬となるだろう。
我らが美しき女神よ、貴方の眷属となり尊敬しながらも、その御元を去る不幸を赦し給え。
アルガードには会わなかった。会っても無駄だから、とその時は思ったが、今は違う考えを抱く。親友である彼も「同じこと」を考えないだろうか。俺が接触することで、それを自覚させてしまわないだろうか。なら、いっそ無心で鎚を振り続けたほうがあいつの為になるかもしれない。咎を負うべきはあいつじゃなくて俺なのだから。
アルガード、お前まで馬鹿に付き合うことはない。生きて神に仕え、ゆっくりと心の傷を癒し、いつか「あのバカが行方不明だ」と苦笑いしながらピオの墓前に花束を置く、そんな男になってくれ、と俺は厚かましくも願うのだ。
某月某日
ここなら誰にも見つかる事はなかろう。しかし、俺という存在を消し去るのにこの日記を
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