43.証拠不十分
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慣れない言葉が……」
「………そういえばこっちには神話の概念が無かったんだったな。こりゃうっかりだ、今のナシねー」
――後にレフィーヤがリヴェリアに教えてもらったことには、シンワとは「神の辿った筋道」のようなものであり、タシンは「同じルーツを持つ多数の神」という古い概念を表しているそうだった。
ついでに普通の人間なら耳にしたこともないぐらい古くて難しい言葉な上に、シンワに関しては神ぐらいしか知らない筈の内容らしい。アズライールという男はどれだけ自分をミステリアスな存在にすれば気が済むのだろうか――と呆れてしまう。
閑話休題。
裏話や私怨はさて置いて、重要なのは何でもいいから手がかりを得ること。ウィリスが夜逃げしていようがいまいが、今の所彼に繋がる情報はラッターの仕入れた情報しかないのだ。ラッターの先導で隠し通路だらけの入り組んだ場所をひたすらに歩き続けた4人は、多数の小さな部屋が積み重なったような狭い空間にやってきた。
通路なのか建物なのか、壁や天井が所どころ存在せず、まるで既存の建物を無理やりこの空間にねじ込むためにあちこちを削ったような構造だ。ただ、アズだけはその空間をどこか懐かしそうに見つめながら歩いていた。
「分譲住宅か……結構な大きさだな」
「の、割に移動の便が悪くて日の当たりも最悪。おまけにダイダロス通りの建物でも指折りの部屋の狭さで人気はゼロだ。部屋数がやたらと多いし管理が面倒で誰も自分の縄張りにしたがらない塵溜めの中の塵溜めだよ、ここは。噂じゃこの部屋のどっかにファミリアの弱みや犯罪の証拠を放り込んで調査の手を逃れてる奴もいるらしい」
「まるでコインロッ……っとと、これもオーネストにしか通じないな」
「うわ、足元に穴が開いてる……!とてもじゃないけどここで生活する人の気が知れませんね、これは」
「吹き曝し状態のせいで風化が酷い……街はずれのオンボロ教会のほうがまだマシに思えます」
「だろう、ガールズ?だから常識的に考えれば何かから逃げるために使われたとしか思えないのさ……っとと、ウェイトエブリワン。この部屋だ」
4人の足が止まる。錆に塗れた金属のプレートには辛うじて数字であることが分かる文字が彫り込まれ、引けばそのまま壊れそうなほどに古びた扉。これと全く同じに見える扉がひたすらに並ぶ中でここだと断言できるのは、情報屋にしか読み取れない、間違い探しのような「何か」があるからだろう。
ラッターは懐から針金のようなものを取り出すと、かちゃかちゃとドアノブに突っ込んで掻きまわす。動かすたびに錆がぱらぱらと零れ落ちているが、それが「ピッキング」と呼ばれる行為であることをレフィーヤとトローネは知らない。
「アズさん、ラッターさんはさっきから何をしてるんで――アズさん?」
「
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