暗黒領域の流儀
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クルは虚をつかれたように声を漏らす……が、ビスクルもさるもので咄嗟に突きを払うように剣を動かした。
そこに俺の、斜め上からの袈裟斬りが襲い掛かる。
先程がギリギリだったのだろう。咄嗟に下がるビスクルだったが、俺の剣は浅くビスクルを傷つける。
「……!」
だが、そんな傷等関係ないとばかりに下がった身体を翻し、こちらに向かって踏み込んでくる。静かな呼気とともに放たれた斬撃は真っすぐで……とても読みやすかった。
「……俺の負けだ」
紙一重の位置でかわした俺はそのまま剣をビスクルの首元に突き付けている。もう一本の剣はビスクルの振り切った剣を抑えており、抜け出せるよりも先に首をはねることができるだろう。
「完敗だ。俺は君達を信用しよう」
負けた後なのにも関わらず、どこか満足げな様子だった。戦闘中は希薄だった感情が戻ってきている。
その様子はどこにでもいそうなちょいワル親父であった。
対して女騎士の方はこの結果が信じられないようで未だに固まっている。先程、ビスクルは騎士団長と名乗っていたので、彼女の中ではビスクルは最強の存在だったに違いない。
最期の騎士は飄々とした顔はどこへやら。こちらを見定めるような視線を隠さないようになっている。
「それにしても、まさかここまで強いとは思わなかった。少々増長していたようだったな」
「いや、そうでもない。その真っすぐな剣を使うやつが知り合いにいてな。慣れていたということもある」
キリトの剣は騎士の正統な剣とは違うが、剣筋が真っすぐなのは同じだ。まあ、キリトのはあくまで実戦の中で鍛えられた剣であり、やりにくさという点ではキリトの剣の方が数段上だろう。本人が真っすぐな性格をしているため裏をかくのは難しくはないのだが。
「それに、俺の剣は邪流だ。正統派の騎士剣では相性が悪いだろう」
言い方は悪いが教科書通りの騎士剣である。多少はアレンジしてあるだろうが、それも誤差の範疇であった。正統派は往々にして自分と同じ土俵では滅法強いのだが、そこから外れると弱い。ただ、どちらも全力は出してない以上、どうなるかはわからないが。
「そうかも知れない。実際にそんな剣は見たこともなかったしな。だが、負けは負け。君達がスパイのような存在ではないことを信用しよう」
好感の持てる人格である。こういうサッパリとした人物は嫌いじゃない。
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