暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 9
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
認し、思考を停止させる。この意味が解りますか?」
 「……骨抜き?」
 「そう! 何をしてもしなくても、生きていても死んでしまっても、結果は「女神アリアのお導き」。個々の主張や思考を蔑ろにする心理状態。よく耳にする「狂信的な信者」の出来上がりですね。一度こうなってしまったら、現在の教皇猊下のようになかなか目を覚ましてくれません。仕方ないと言えば仕方ないのですが……それが正しい信仰の在り方だとはどうしても思えない。ミートリッテさん、私はね。女神アリアは基本、放任主義じゃないかなって推測しています」
 「放任主義?」
 「ええ。世界を見守り、救いを求める数多の声をお聴きになりながらも、過度の干渉はされない。どうしても見ていられなくなった時だけ……ほんの少しだけ、助けてくださっているのではないかと。あくまで私個人の考えですが」
 目を細めて女神像を見上げるアーレスト。灯りに揺れる横顔がとても優しげで、ミートリッテの心に渦巻く毒気が急速に(しぼ)んでいく。
 (出逢いを用意していたのではなく、偶然近くに居た二人を互いに気付かせた。それが、アーレスト神父が考える「祝福」。でも、多くの信徒は…… うん? ちょっと待て。この人……)
 飛び出した不穏な単語の数々で、冷たい感触が背中に一筋、つーっと伝い落ちる。
 「……先程の素質がどうとかって……もしかして、女神信仰に対する姿勢の話ですか?」
 「はい」
 (あっさり爽やか、にこやかに肯定しやがったーッ!)
 「いやいやいや、無理ですできません絶対無理! 一般民に何を期待してんですか! 発想がおかしいでしょう!」
 両手を前面に突き出し、ぶんぶんと首を振るミートリッテを正面に見た神父は、美しい顔をあからさまな喜びで満たした。
 「頭の回転も早い! やはり貴女は逸材ですね、ミートリッテさん!」
 「勘弁してください! 普通に考えなくても無謀だって解るでしょ!? 絶対無理!」
 「大丈夫! 私と、私の仲間達が、全力で共闘します!」
 「そんな勧誘言葉聴いたこと無いーっ!」
 「為せば成ります何事も!」
 「だったら関係者だけで完結してください!」
 「ですから関係者に!」
 「お断りします!」
 「諦めません!」
 「お願い挫けて!」
 「お断りします!」
 「私の台詞を盗るなーッ!」
 無茶苦茶だ。
 この神父、遊び人以上の危険人物だった。
 (教皇含め、多くの信徒は女神に人生丸投げしてる。そんな中でこの人は教典の見解を違えていて、どうやら仲間も居るけど少数派。私を引き込んで、王都でも通用する司教候補の教育を施したいと来たらもうこれ……絶対、アリア信仰の内部抗争じゃないか!! このくそ忙しい時にややこしい事態へ巻き込むなー! 忙しくなくても迷惑だあーッ!)
 妙に興味
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ