Side Story
少女怪盗と仮面の神父 9
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難易度急上昇中。
シャムロックとしては明らかに悪手だ。
それでも、アーレストには歩み寄りたくない。
厄介でも面倒でも別の手段を……と、新しい策を探っていると
「素晴らしい!」
「…………は?」
アーレストが両手を叩いて賞賛を寄越した。
「そうなんです。信徒の多くは『偶然や奇蹟を女神アリアの祝福とするならそこに至るまでの経緯も彼女の業である』と考えています。何故なら人間は意思、個性、自我を持つ考える生き物だから。常に直感やなんとなくだけで行動できる人間はいません。どこかに理由があるから動ける。だからこそ、祝福は用意されていたものであると解釈してしまうのですね。そして貴女も考えた通り、すべては女神アリアがお導きくださった結果であると誤認し、その時点から思考を停止させてしまう。この意味が解りますか?」
「……骨抜き?」
「そう! 何をしてもしなくても、生きていても死んでしまっても、結果はすべて女神アリアのお導き。個々人の主張や思考を蔑ろにする心理状態。一般の方々がよく耳にする『狂信的な信者』の出来上がりですね。一度でもこうなってしまったら、アリア信仰を代表する教皇猊下のように、なかなか目を覚ましてくれません。仕方ないと言えば仕方ないのですが……私には、それが正しい信仰のあり方だとはどうしても思えない。ミートリッテさん。これはあくまでも私個人の考えなのですが、女神アリアは基本的に放任主義ではないかと推測しています」
「放任主義?」
「ええ。全世界を見守り、救いを求める数多の声をお聴きになりながらも、過度の干渉はされない。どうしても見ていられなくなった時だけ……ほんの少しだけ、助けてくださっているのではないかと思うのです」
柔らかく細めた目で、女神像を見上げるアーレスト。
灯りに揺れる横顔が優しげで。
ミートリッテの心に渦巻いていた毒気が急速にしぼんでいく。
爆発寸前だった感情が、徐々に落ち着きを取り戻していく。
(あらかじめ出会いを用意していたんじゃなくて、偶然近くに居た二人を、互いに気付かせた。それが、アーレスト神父が考えている『祝福』。でも、多くの信徒は…… うん? ちょっと待て。この人……)
飛び出した不穏な単語の数々で、ミートリッテの背中に冷たい汗が一筋、つつーっと伝い落ちる。
「あの……先ほどの素質がどうとかって……もしかして、女神信仰に対する姿勢の話ですか?」
「はい」
(あっさり爽やか、にこやかに肯定しやがったーっ!)
「いやいやいや! 無理です! できません! 絶対無理! 一般民に何を期待してんですか! 発想がおかしいでしょう!」
両手を前面に突き出し
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