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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 9
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で誰かの責任にするのなら。私は私を、今以上に軽蔑する! それに)
 アーレストの言い分は、余分な生活苦を背負ってまでミートリッテを生かしたハウィスの優しさと決断……手を差し伸べてくれた強さや、彼女の人格を形成する背景までもが女神の手駒だと貶めた。正直、底抜けに気分が悪い。
 しかし、怒りのままアーレストに噛み付いて不興を買ってしまえば、今後教会に来るのは難しい。女神像に触れる機会を手放してしまったら『依頼』が果たせなくなる。
 ハウィスへの冒涜に怒って彼女を危険に晒すなど、本末転倒もいいところだ。
 腹に湧く罵詈雑言を必死で呑み込み、腕に力を入れて小刻みに震える拳を抑えた。
 「……神父様の言葉が女神アリアの本意だとしたら、やっぱり私に信徒の資格は無いと思います。私が感謝を捧げるのは、私に触れた全てのものと、私の糧になった総ての命です。女神アリアが私に何らかの希望や結果を与えてくれた覚えはありませんし、偶然や出逢いが女神の祝福……救いだなんて考えられない。それじゃ何があっても女神のおかげになってしまうし、一人一人の思考や行動まで予め決められているみたいで、すごく嫌。そんな考え方自体が誰かの意思と自分自身の人生に対して失礼だし、無責任だわ。私は自分で選んで、自分の足で此処まで来たのよ。女神アリアのお導きなんかじゃない!」
 本当は、なんのかんのごねても最後には「こんな私でも良いなら」と頷くつもりだった。折角仕事場に招いてくれると言うのなら、こんな美味しい話を逃す手はない。何を教えられたとしても自分がアリア信仰に傾倒する姿なんて想像できないし、仕事さえ終わらせれば適当な理由を作って縁を切るだけだ。例えば、女性達の目が恐くて耐えられない……とか。
 うん。これは偽造じゃない。
 (でも、無理。この人はハウィスを莫迦にした。私の大切な恩人を、女神の人形扱いした。絶対に赦せない。宗教関係者なんか大っ嫌いだ! 誰が頷くもんか!)
 誘いを断るなら教会に堂々と出入りするのは不自然。盗みに入ろうとしても、内外で難易度急上昇中。
 シャムロックとしては明らかに悪手だ。
 それでも、アーレストには歩み寄りたくない。厄介でも面倒でも別の手段を……と、新しい策を探っていると
 「素晴らしい!」
 「…………は?」
 アーレストが両手を叩いて賞賛を寄越した。
 「そうなんですよ。多くの信徒は「偶然や奇蹟を女神アリアの祝福とするなら、其処に至るまでの経緯も彼女の業である」と考えています。何故なら人間は意思、個性、自我を持つ生き物だから。常に直感やなんとなくだけで行動する人間はいません。何処かに理由があるから動ける。だからこそ、「祝福は用意されていたもの」と解釈してしまうのですね。そして、貴女が考えた通り「自らの存在は女神アリアがお導きくださった結果だ」と誤
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