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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章転節 落暉のアントラクト  2023/11
8話 深紅の情動
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見えるっしょ?」
「………そんな気が………する………」


 申し訳ないが、絹という素材についての知識はあっても実物をよく知らない。


「キミは、美術だけじゃなくて家庭科もダメだったクチだね?」
「………悪かったな」
「うんにゃ、別にぃ。弱みのあるくらいが可愛げあるって言うじゃない」


 弱みじゃなくて汚点だな。
 それ以外が完璧だったかと言われると、素直に首を縦に触れないところが悔しくもあるが。


「シルクを調達して来てあげても良かったんだけど、せっかく頑張って取って来たんだから使わなきゃね。リメイク品ってことで仕立ててみよう」
「なんか、見てるだけだと簡単そうだな。お手軽というか………」
「いやいや、こっちのが断然値が張るっての。ぶっちゃけ、ここまでで使ったアイテムだけで同じだけのシルクベール一年分くらい用意出来ちゃうレベルだね」
「………嘘だろ?」
のーん(No)いっつ(It's)れぁりぃ(Really)


 気の抜けたイングリッシュで返答され、いよいよ言葉を失ってしまう。
 価格的に大丈夫なのだろうか。懐具合が本格的に心配になってくるが、ローゼリンデは対して不敵な笑みを浮かべて俺に告げた。


「分割支払い、やっちゃう?」
「利息が怖いわ」
「冗談、こんくらいのシルク生地だったら今の相場で一切れ五十コルってとこだから、二万コルでオツリが出ちゃうね! おっとくー!」
「安くないだろ」
「いやいや、レイヤー志望のプレイヤーさんやコスプレ専門のお針子さんは300K(三十万コル)からが本番ってのもわんさかいるし。リゼっちなんかは頑張ってんじゃないかなー」
「業が深いな」


 食指が動いた女性プレイヤーを自分好みの服装へと無理矢理に着せ替えるリゼル。
 その凶行の裏側にあった涙ぐましい努力があってこそだと知ると、どうにも言えない感情が湧き上がってくる。なんというべきか、努力する方向を著しく間違えているように思えてならない。


「そんで、ここにレースっぽい刺繍入れてくと………どーよ?」
「お、おぉ………すげぇ!?」
「すげぇだろー、もっとお姉さんを褒めれー。つっても、工程はシステムで省略なんだけどね」


 思わず感嘆が口を突いて出ると、ローゼリンデは得意気な笑みを以て手を止める。如何にセンスがない人間であっても、施された意匠が如何に凄まじいかは理解できるつもりでいる。
 ついに作業工程を終えて返されたベールは、オリジナルからデザインを異にする別物として姿を改めていた。
 アイテム本来の羽のような軽さと透けるような薄さをそのままに、光沢のある純白と柔らかい肌触りは相応のレアアイテムの働きか。しかし、施された精緻で華麗な刺繍が職人の技量の高さを声高
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