暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章転節 落暉のアントラクト  2023/11
8話 深紅の情動
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お針子として商売をやっていけるのだから驚かされる。アルゴの事もあるし、SAOにおける商売人の対応力が気になるところだ。他人事ながら不安に思わされる。


「でもま、愛人じゃなくても、仲良く出来る友達ってのは大切にしなよ? 後になって後悔しても遅いんだかんね」


 言いつつ、ローゼリンデは暖炉に松ぼっくりを()べる。
 彼女には珍しい説教臭い台詞は、しかし切ない響きを感じさせるようにも思えた。事の真相は定かではないが、気安く探って良いものでもないだろう。敢えて深くを知ろうとはしないように努めた。

「分かってる。それにただでさえあの人は強いし、センスもある。そのベールだってその人と取ってきた戦利品だ。あんな人が前線に来れれば、もっと勢いも増すんだろうな」
「へぇー、珍しく持ち上げんじゃん」
「正当な評価だ」
「ま、そーいうことにしときますかねー」


 何か意味有り気な物言いではあるが追及は為されず、そそくさと席を離れては桶からベールを引っ張り出す。水を滴らせながら現れたベールは、色彩系統のパラメータが初期化されたかのように純白で、これ以上に手を加える意味があるのだろうかと内心で疑ってしまう。


「一応言っとくけど、これで納得しちゃったらダメだかんね?」
「これでは駄目なのか?」
「ま、見ときんしゃい。この状態はアイテムの色が初期化されてる状態なわけ。これにちょい手を加えとくのよ」


 説明もそこそこに、白くなったベールに小瓶の中身を一滴ずつ落とす。
 しかし、何が変化したのかは俺如きでは皆目見当も付かない。思わず首を傾げると、ローゼリンデの苦笑いが再び零れる。


「ホレ、ちょっとだけ光沢付いたっしょ? ついでに触ってみ?」
「………言われてみれば、そんなふうに見えなくもないし、なんかサラサラした気がする………」
「イイトコ気付いたね。お姉さんが褒めたげよう!」


 察するに、今垂らした雫は《光沢をつける染料系アイテム》と《肌触りを変更するアイテム》だったわけだ。どうにも俺のデータベースにはないような専門アイテムの存在に感嘆しつつ、頭に伸ばされた手を払い退ける。


「もー、恥ずかしがり屋さんなんだからー。ヒヨリちゃんはもっと素直だぞ?」
「俺とヤツを一緒にするな」
「ハイハイ、っと………話を戻すけど、コイツは元々はシースルー系でね、黒かったから良い具合にエロかったんだけどさ、色を落としちゃうと安物感がハンパないんだなーコレが」


 布に印象を見出す境地たるや、流石は名匠と言わざるを得ない。
 だが、話に付いて行けない俺からしてみれば辛い状況ではある。


「ま、安っぽい薄切れじゃ結婚式なんて出来ないから、こうして光沢を出して風合いを変えればシルクっぽく
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