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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章転節 落暉のアントラクト  2023/11
8話 深紅の情動
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が大いに輝くのである。贈り物を差し出すシーンから先の結末は当人に依存することだろうが、今回はあくまで頼まれただけ。彼女の下を訪れる客のような決死の覚悟など持ち合わせていないだけに、気は相当に楽だ。


「へーぃ。じゃ、チャチャっとお仕事始めよっかね」


 気怠そうに棚に向かったローゼリンデは、棚から小瓶を幾つか拾い上げて再び机に向き直る。


「はい、一応説明。コイツがアイテム本来の色を落とすヤツで、コイツとコイツが隠し味ね」
「………なるほど、俺でも隠し味以外は分かったような気がする」
「ほとんどダメじゃん。まー、こんなのはウチら(お針子)くらいじゃないと役に立たないだろうし、知らなくたってだいじょぶっしょ。じゃあ始めちゃいますよーっと」


 瓶を一つずつ持ち上げながら説明してくれた彼女には申し訳ない限りだ。説明責任が果たされたかというと、その限りではなさそうだが。
 とはいえ、それを差し引いても成績表の上での評価だが、生憎と俺の美術のセンスは最悪だ。しかし、ローゼリンデは苦笑い一つで場を収め、作業に取り掛かる。とはいえ、水の張った桶に小瓶から数滴中身を零し、そこにベールを沈めるだけ。それだけ済むと、ちょうど空いている隣の席にわざわざ移動してくる。


「はい。じゃ、時間もあることだし、新しく出来たダチについて聞こうじゃないの」
「………まだそんな話してないよな」
「でも、間違ってないっしょ? キミのダチで結婚なんて浮いた話ってのも聞かないし、必然的に別の誰かってことになる。でもその誰かは全くの無関係じゃない。そんでもって普段と違って機嫌が良いし、そんな分かりやすい変化を踏まえて考えたら、在り得そうな線ってのはそのくらいってもんよ。どーだ参ったか」
「………まあ、そういうことだ」


 見透かされている。
 ホントに底の知れない女だ、恐ろしいことこの上ない。
 そんな戦慄さえ気にも留めず、ローゼリンデは暖炉の火に松ぼっくりを放って遊び始める。青い炎が揺らめく度に歓声をあげる赤ジャージを横目に、半ば観念するような心持ちで白状する。


「なんてことはない。歳の離れた知り合いが出来たってだけだ。相手は旦那さんだっているしな」
「年上の女の人なのん?」
「そうだな………年功序列というか、姉御肌というか、おかげで随分と振り回されたよ」
「もしかして、略奪愛に発展したり? 良い具合に爛れた関係ってやつ!?」
「だからそういう展開になるわけねぇだろ!? そうなっても断るわ!!」
「………えぇー、つまんねーのー」


 唇を尖らせながら露骨に退屈を訴えてくるが、生憎と楽しませるような話題は持ち合わせていない。
 ローゼリンデの趣味趣向には少なからぬ危機感めいたものを感じさせられるが、これで
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