第1章転節 落暉のアントラクト 2023/11
8話 深紅の情動
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「そもそも付き合ってない。ただのPTというヤツだ」
「ふーん、やっぱつまんないの」
「とにかく、今日は依頼があって来た。こいつを白系統に色彩変更してもらいたい」
脱線したまま猛進する話題の行き先に付いて行くつもりもなく、無理矢理に本題へと話を運ぶ。
ついでにオブジェクト化した《女王》のドロップ品であるベールをテーブルに差し出すと、ローゼリンデはそのまま手に取ってメガネをワザとらしく指先で持ち上げる。
メガネ自体が《鑑定スキルの精度に補正を与え、さらに追加情報を付与する》効果を保有するマジックアイテムであるから、意味のない行為ではないのだろうが、それこそが彼女の仕事モードへ移行する為に必要なプロセスなので黙って見守ることとした。
「ふへぇ〜、こりゃあまた珍しいもん見っけて来たねぇ。………ドロップするモンスターは《メイヴ・ザ・ショールクイーン》っと……ネームドのレアドロか何か?」
「相変わらず、とんでもない観察眼だな。隠しクエストのボスのLAボーナスだ」
女王の名前の謎も解けたものの、努めて表情に出さぬよう心掛ける。
アイテムの鑑定において《ドロップするモンスターの名称》まで看破してしまう点もさることながら、難解なスペリングでさえ苦もなく読み上げてしまうのだから、尚の事底の知れない相手だ。
「へぇ〜、本邦初公開ってわけだ。布系素材としても優秀だけど、ホントに染色だけでええのん?」
「俺のじゃないからな。頼んできた相手も結婚式をやりたいっていうから、それっぽく仕上げてくれると助かる。こういうのはアンタにしか頼めないからな」
《忙しそう》などと理由づけこそしたが、実際の根拠は別のところにある。
ヒヨリは脳の構造が単純作業向けだから却下。
リゼルは変な方向に暴走して収拾がつかなくなりそうなので却下。
アシュレイは色々と面倒臭いから却下。
「あぁー、確かにアシュレイとかだとブチギレそうだよね。プロ意識あるし、こういうの適当に出来なさそうだし」
「そういうわけだ。頼んだぞ」
つまるところ、《纏まらない意見を汲んでくれる》彼女しか適任がいないのである。
アシュレイとローゼリンデ。両者共に技術面では拮抗しているが、作品に対する顧客自身の思い入れが感じられない以上は仕事さえ請け負わない《頑固一徹な》職人肌なアシュレイに対して、ローゼリンデは自分の感覚だけで仕事を始めるという《きまぐれな》職人肌なのである。こうしたスタンスの違いもあってか、お針子としての人気は《意見を反映してくれる》アシュレイに軍配が上がったのである。
しかし、決して仕事が無いわけではない。異性の感覚の分からないプレイヤーが意中の相手に何かしらの贈り物を見繕う際に、彼女のセンス
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