第十五話「悪夢」
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「働く?そりゃあ、言いつけられればどんな苦しみにも耐えてきた。だけどこれからは自分で生きてか
なきゃいけねえ、そんなのは地獄だ」
「そうだ、この世は一切合切地獄だ。どんな生き方をしようが逃れられはせぬ、だが自分で自分の食い
扶持を稼いでみよ、お前たちはまだ知らぬだけだ。知らぬから怖いのだ。俺が今さっき、あんたたちの
かせを斬った。だが自分のかせは自分で壊さねば壊れはしない、一切合切地獄ならどこへ行ってもやは
り地獄。ならば少しでもましな生き方をする。それが人間というものだ」
「そうはいっても」
「いいだろう、では私についてこい、お前たちに機会をやろう」
タチカゼはそのまま歩き出した。奴隷用のぼろに身を包んでいようとそれに腰帯をし刀を下げそして
奴隷商の荷車にあった金で服と武器を買った。
「これをつけろ」
「こ、こんなもの。どうするんで」
「なに、使い方などくわやすきと変わらん、それをもってついてこい」
タチカゼはそのまま、町を歩く、服を着替えた奴隷たちは見かけだけだがもう奴隷ではない。
そんなものたちを従えて、今度は奴隷市場へ行く、奴隷たちに槍をもたせてその人ごみに分け入って
いく。薬漬けの貴族たちも面白半分にみている。
タチカゼは奴隷を見るや片っ端からかせを取っ払う。そしてついてこいとだけいってそこらのすきや
くわを持たせる。
あまりに堂々としているものだから、奴隷商は開いた口が塞がらない。その間に奴隷たちは武装した
集団に変わってしまった。
それも長い間の労働によって鍛えられた体は奴隷商人の太った腹よりも数倍も強そうだ。奴隷たちは
自然と自分たちのほうが強いと感じ始めた。その時だった、どこからともなく兵士が現れ、そしてこの
町の役人が現れた。
「貴様か、奴隷たちを自由にして蹶起させようとしているのは!」
「お前がこの町の王か」
「い、いや私は町の一役人でしかない。王は王国にしかおらんでな、わしはこの町の自治をまかされて
おる、と、とにかく奴隷どもを自由にされてはこの町は立ち行かぬのだ」
「ならば、そのもやしのような兵卒どもと合戦の一つでもしてはどうか?」
「な、なにい?」
「ふはは、いやこれは失敬、奴隷たちを見よ、男はたくましく、女はりりしい、これまでの苦しみから
比べればお前たちのような兵士くずれは負けて敗走するのがおちだ!おい、者ども。鬨の声をあげよ」
そう聞いてはじめは奴隷たちもなんのことか分からなかったがどうやら大声を出せということらし
い。すると一人また一人と地鳴りを引き起こすような声を上げ始めた。兵士たちは内心震えあがった。
「さあ、
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