第十五話「悪夢」
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「さあ、他の奴隷のかせの鍵も渡してもらおうか」
「わ、わかった。だから命だけは」
そういって男は鍵を置いて逃げていった。それを見ていた町人、貴族たちはまるで馬鹿馬鹿しいかの
ように笑った。
「なぜ笑う!お前たちも一歩間違えばこの者たちのようになるのだぞ!」
「ふふふ、じゃあ、教えてあげようか。世間知らずの勇者さま」
そちらへ向くと建物の二階のベランダから寝そべって頭を出す娘がいた。そこには得体のしれぬ薬で
半分夢のなかの貴族の娘がいた。もうもうと立ち上るキセルの煙がどこか浮世離れした娘に見せた。
「そら、鍵を目の前にしても奴隷たちは自分のかせを取ろうとしない、いいかい、奴隷なんてのはね、
一度なっちまったら心まで
そうなっちまうもんなのさ、あんたはいいよ、たぶんどこぞのいい身分の者なんだから、だけどそいつ
らは根っからの奴隷階級さ、
生まれつき、奴隷として生きる定めなのさ。もうそいつらは人生を半分諦めちまってる。心が死んでる
のさ」
「心が死ぬか、それならば貴女、あなたもすでに死んでいる」
「な、なにい!」
「その薬、聞いたことがある。夢幻を見せ、心を病ませ、そして体を蝕む。最後には心も体も壊れて狂
ってしまう。一度それを使うとどうしてもやめられなくなり、吸い続けなければならなくなる。あなた
は一生を自分の財産をその薬に食いつぶされ、最後は自分すら食いつぶされるのだ」
「ふふ、くはは!」
「何がおかしい!」
「あたしがなぜ麻薬なんかに手を出してるかって、人間の世なんてのはね、夢幻のようなものなのよ、
真面目に生きようとするほうが馬鹿なのさ、あんただってついいまさっきまで廃人のような風体だった
くせにさ。言っておくよ、この町で人を救おうなんてしなさんな、さっさと自分の使命かなにかを果た
す旅にでも戻りな。あんたはここじゃ、無力同然なのだからね」
「私は目の前に困っている人間を見て放っておけるほど世を儚んではいない」
するとタチカゼは、荷車に乗せてあった奴隷商から取られた刀を取り戻して、一太刀にみなのかせを
斬った。これには貴族の娘も驚いた。
「さあ、どこへなりといくがいい、また奴隷になるのもその手でなにかをつかむのも自由だ」
奴隷たちははじめ、おろおろしていた。だが自分たちのかせがないのを見てその二つに割れたかせを
見て、タチカゼにすがった」
「お、おねげえです、元に戻してくだせえ。わしらはこうして生きていくより仕方がないんです」
「あなたたちは、生きてる間、それこそ奴隷のように働いた。ならそれを自分のために働くことにいま
さらなんの苦心がある?」
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