第二十六話 困った子ですその十
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「まだ会ったばかりで言うのも何だけれどね」
「って言ってるし」
「言いたくもなるわよ。大体ね、君は」
「格好よくて背が高くてイケメンでもててもてて仕方がないと」
「誰がそんなこと言ったのよっ」
また八重歯が出てしまいました。何処をどうやったらこんな自分に都合のいい解釈ができるんでしょうか。そのお気楽さが呆れる程です。
「いい加減って言った覚えはあるけれどそれはないわよ」
「厳しいなあ、先輩は」
「とにかくね。これからお見舞いだけれど」
話を少し強引に戻しました。
「手伝ってくれるっていうの?」
「はい」
にこにこと笑って答えてきました。
「そのつもりですけれど」
「だったら御願いするわ」
人の手は必要ですから。私一人だと詰所の人達が気を使ってくれるんで申し訳ないんです。けれどこの子が自分からって言うのならいいかしらって思ってこう言いました。
「悪いけれど。いいかしら」
「最初からそう言っていますけれど」
「そうは聞こえなかったのよ」
右手にお花が見える道を歩きながら阿波野君に言います。天理高校の前はお花が一杯置かれていていつも赤や黄色で飾られていてとても奇麗です。営繕の人達がいつも手入れしてくれているんです。神殿の黒門から学校まで一年中ずっとお花を見ることができます。
「とてもね」
「僕の言葉って誤解されやすいんですね」
「誤解じゃなくて確信だったわ」
とにかくいい加減ですから。
「絶対冗談だってね」
「やれやれですよ」
「それでも。手伝ってくれるっていうのなら」
「先輩の為なら」
「私の為じゃないの」
このことははっきりと断っておきました。
「信者さんの為よ。そこんとこはっきりわかっておいてね」
「わかってますよ、それは」
「どうだか」
全然わかっていないと私は見ていますけれど。
「わかっていたらもうちょっと真面目にね」
「まあまあ」
「まあまあじゃないわよ。あっ」
高校を出てすぐの道のところでまた言いました。
「信号渡ったらすぐに左に曲がるわよ」
「左ですか」
「そう、左よ」
阿波野君に言いました。
「信号渡ったらね。そこから詰め所に行くわよ」
「商店街通らないですか」
「あそこ通ったら遠回りになるのよ」
そちらの方が賑やかですけれど今は近道を選びました。
「だからよ。いいわね」
「わかりました」
「もうお見舞いの品は用意してもらってるし」
「成程」
「後は詰所で受け取るだけなのよ」
「じゃあすぐなんですね」
「それ持ってよろづ相談所に行くだけよ」
このこともまた言いました。
「わかってくれたわね」
「最初からわかっていましたよ」
「近道のことはわかっていなかったみたいだけれど」
「それは気のせいですよ」
また随
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