巻ノ三十七 上杉景勝その五
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「身に着けられるでしょう」
「それでは」
「その様に」
「我等も共に武芸に励みます」
「そしてそれぞれの術を身に着けますので」
「殿もまた」
「その様にな、しかしな」
ここでだ、幸村はこうも言った。
「刀もそうであるし」
「武士の表芸の」
「それもですか」
「身につけられますか」
「そちらも」
「そして弓や鉄砲もな」
この二つもというのだ。
「やはり励もう」
「そうされますか」
「そちらもですか」
「忘れずに」
「身に着けられますか」
「それも武芸じゃからな」
それの十八般にあるからだというのだ。
「怠らぬ」
「ですか、流石は殿」
「一芸に収まらずにですか」
「そのうえで、ですか」
「十八般全てを身に着けられ」
「そして、ですか」
「そうじゃ、弓も鉄砲もな」
そのどちらもというのだ。
「わしは身に着ける」
「わかりました」
こう言ってだ、実際にだった。
幸村は二本の槍を使う術の鍛錬をしつつ他の十八般、その中にある弓や鉄砲のものも忘れずにだった。日々続けていた。
朝から晩まで十勇士達と共に鍛錬をし寸暇があれば、そして夜も書を読んだ。そうして充実した日々を過ごしていた。
その話を聞いてだ、兼続は唸って言った。
「そうか、日々か」
「はい、十八般の鍛錬を積まれ」
「書も読まれ」
「毎日です」
「励まれておられます」
「家臣の方々と共に」
「見事であるな」
兼続はその話を聞いて腕を組んで言った。
「人質の日々でもな」
「はい、文武においてです」
「ご自身を鍛えられています」
「命を奪われるかと怯えるのではなく」
「その様にされているとは」
「見事な方ですな」
「全く以て」
兼続に話す者達も言う。
「真田殿のご次男はです」
「まさに真の武士」
「家臣の方々もですが」
「噂以上の御仁じゃな」
兼続は瞑目する様にして述べた。
「わしの見立てを超えておる」
「では、ですな」
「あの方は今以上にですな」
「大きくなられ」
「やがては」
「天下一の武士になられるわ」
まさにというのだ。
「間違いなくな」
「ですか、では」
「あの方には」
「より学んでいってもらいたい」
こう言うのだった。
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