巻ノ三十七 上杉景勝その三
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「これよりな」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「屋敷に戻り」
「お話を」
「そうしようぞ」
こう話してだ、そしてだった。
主従は屋敷に入った、そのうえで。
彼等はだ、その話をするのだった。
「それで殿」
「景勝様ですが」
「一体どういった方でしたか」
「噂通りの方でしたか」
「うむ、とても寡黙な方だった」
その通りだとだ、幸村は主従に答えた。
「実にな」
「やはりそうですか」
「あの方はですか」
「極めて寡黙で」
「言葉の少ない方でしたか」
「そしてお顔も険しかった」
表情もというのだ。
「そうした方だった」
「ですか、それでですか」
「お帰りになられたのが早かったのですな」
「随分と」
「そうであるな、確かに」
帰るのがすぐだったことはだ、幸村も感じ取っていて言う。
「会見はすぐに終わった」
「でしたな」
「いや、実にです」
「お帰りが早くです」
「我等も少し驚きました」
「思っていたよりもだったので」
「左様か、しかしその少ないお言葉の中にな」
幸村は彼等にこのことも話した。
「実に多くのものがある」
「そうした方ですか」
「お言葉は少なくとも」
「それでもなのですか」
「そうした方じゃ、だからな」
さらに話した、兼続のことを。
「上杉家百二十万石の主に相応しい」
「まさにですか」
「そうした方でしたか」
「あの方は」
「拙者はそう思った」
まさにというのだ。
「そして謙信公の跡を継がれることもな」
「相応しい」
「そうも思われましたか」
「うむ、あの方ならな」
まさにというのだ。
「それだけの方じゃ」
「左様ですか」
「ではその方とお会い出来てですか」
「殿もですか」
「有り難く思われていますjか」
「うむ、実にな」
幸村は家臣達に満足している声で答えた。
「そう思っておる、そしてじゃ」
「そして?」
「そしてとは」
「ここにおる間鍛錬と書は好きなだけ楽しんでいいと言われた」
このこともだ、幸村は家臣達に話した。
「直江殿からな」
「ではこの城にいる間はですか」
「書を読まれ鍛錬に励み」
「そうして己を磨かれますか」
「そうしようぞ、上杉家には多くの書があるという」
だからこそというのだ。
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