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美食
1部分:第一章
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んな奇妙な店に入ってである。何が何なのかわからなくなった彼であった。
「あの、この店は」
「そう、美食倶楽部だよ」
 その禿げた男は胸を張って言ってきたのであった。
「ここがね」
「はい」
「話は聞いているよね」
 そして今度はいきなりこう言ってきたのであった。
「もうね」
「何か美味しいものを出してくれる集まりだとか」
「そう、ここはそうなんだよ」
 胸を張り続けたままの言葉であった。
「ここにこそ真の美食があるんだよ」
「真のですか」
「真の美食とは何か」
 男はその奇妙な店の中で奇妙な話をしてきた。
「それを知る場所なんだよ」
「そうなのですか」
「そう、そしてだよ」
 彼は言葉を続けていく。
「まず私はこの店のマスターであり美食倶楽部会長でもあり」
「会長さんなんですか」
「名前は緒方洪庵」
 こう名乗ってきた。

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