圏内事件 ー終幕ー
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をホームのタンスなどの別場所に移し返せばいいし、鍛冶師ならば重いインゴットを扱うため、〈ストレージ拡大〉などのスキルを取っており同レベル帯のプレイヤーが所持できるアイテムより遥かに多い量を収納出来るはずだ。
それに指輪だって、殺害する場に居合わせ、例の指輪だけ貰ってしまえは済む話。 ヨルコさん曰く、指輪は相当地味な作りだったらしいから、PKer達もそんな大それたマジックアイテムとは思わず、多少の金銭を要求して渡しくれるだろう。若しくは、圏外に誘って油断したところを麻痺毒を塗ったナイフで刺すとか……。
ーーなんだ、なんだ。 呆気ない。
一度大きく息を吐いてから、私の推測を口にしてみれば、グリムロックは冷静な態度を崩し大きく動揺を示した。
「私が、グリセルダに手をかけただと? 巫山戯るなッ! 冗談でも言っていいことと悪いことがあるぞ」
「けど、結婚指輪ないんでしょう? 本当は金に目が眩んで殺したんじゃないの?」
「そんな馬鹿がことがあって堪るかっ……! 第一、私が彼女を殺すわけがーー」
人が変わったように激情するグリムロックの言葉を後方でやりとりを見ていたヨルコさんが遮った。 そして、スッと迷いない動作で立ち上がるとグリセルダ氏の墓標の裏に跪くと、素手で土を掻き始めた。 全員が凝視をする中、やがて立ち上がったヨルコさんの右手には銀色に鈍く光る箱が握れていた。
「……〈永久保存トリンケット〉?」
文字通り内部に保存したアイテムを永久に保存する事が出来る代物だ。 だが最大サイズが十センチ四方なので大きなアイテム類は入れられないがそれこそ、指輪アイテム位なら数個入れられる。 それにこれに収納されたアイテムは、フィールドに放置しておいても耐久値の減少による自然消滅する事は絶対にない。
ヨルコさんがそっと銀の小箱の蓋を開けると、中に入っていたのは二つの指輪だった。
片方は、平らになった天頂部に林檎の彫刻が施されたもの。 もう片方は、特にこれといった装飾はされていないものの、グリムロックはそれを目を見開いて見つめていた。
「……これは、《黄金林檎》の印章。 そして、これは……これは! 彼女がいつも左手の薬指に嵌めていた、あなたとの結婚指輪よ! 内側にはしっかりとあなたの名前も刻んであるわ! ……この二つがここにあるという事は、リーダーが、ポータルから圏外に引き出されて殺された瞬間、両手にこれらを装備していたという揺るぎない証よ! 」
二つの指輪をハッキリと見せつけ、ヨルコさんは涙混じりにグリムロックを糾弾する。
「ねぇ……! なんで……なんでなの?? なんでリーダーを殺したの! 本当に、お金のために……奥さんを殺したの!?」
「…………金? 金だって?」
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