圏内事件 ー終幕ー
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ュミット達を消そう、〈笑う棺桶〉をけしかけて殺そうとした、とはキリトの見解であるが筋は通っていると思う。 足りないのは、〈結婚〉までした仲の人を殺そうとする動機だろうか?
皆に懐疑の視線を向けられた鍛治師グリムロックは微笑を滲ませたまま、弁明した。
「……誤解だよ。 私は事の顛末を見届ける責任があると思ってこの場所に向かっていたんだ。 けど、私はあんな恐ろしい殺人鬼たちが来るとは知らなかったんだ。 丸腰なのに、あんな奴らの前に飛び出していかなかったと言って、どうして責められなければならないのだろうか? そもそも、私が、妻をーーグリセルダを殺そうとする動機がないと思うがね」
意外と情に熱いアスナが何度かいい返そうとしているのを、キリトが左手で制し、口を開いた。
「初めましてだよな、グリムロックさん。 俺はキリトっう……まぁただの部外者だけど。 ーー動機ならあるぜ?」
「ほう……なら聞かせて貰おうか、探偵君」
グリムロックは、スッと目線を鋭くさせキリトへと続きを催促する。 対するキリトも何か確信を得たような表情で言葉を続けた。
「去年の秋、《黄金林檎》解散となった〈指輪事件〉……これはあんたが必ず関わっている。 いや、主導している。 なぜなら、グリセルダさんを殺したのは誰であれ、必ず得をするのはアンタだからだ。 彼女が死ねば、ストレージを共有化していたアンタの手元に、絶対に件の指輪が残ったからだ。 彼女が死んだ後、その事実を明らかにせず、指輪を密かに換金して、半額をシュミットへと渡した。 これは、犯人にしか取り得ない行動だ。 ゆえに、あんたが今回の〈圏内事件〉に関わった動機もただ一つ……関係者の口を塞ぎ闇に葬ること」
そう締めくくると、濃い沈黙が生まれた。 青白い光を放つ月がこの場の陰鬱さを濃くする中、グリムロックは口元を奇妙に歪めた。
「面白い推理だ、探偵君。……だが、その推理には一つ穴がある」
「なに?」
反論の余地があると宣告され、キリトの表情が強張る。 グリムロックは、黒手袋をはめた右手で、鍔帽子を引き下げると続けた。
「確かに、当時私と妻のストレージは共有されていたし、彼女か殺されたとき、そのストレージに存在していた全アイテムは私の手元へと残った、という推論は正しい。 しかし、もしあの指輪がストレージ内になかったとしたら……? つまり、彼女が装備していたとしたら……?」
「くっ…………」
キリトが思わぬ盲点を突かれ、歯?みする。
データから、オブジェクト化され装備されていたアイテムは被装備主が殺された時、無条件でその場へとドロップする。 だからもし、指輪をを装備している状態で殺されたら、指輪はグリムロックの手へと渡らず、殺人者の手に落ちたという論法は成り立
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