圏内事件 ー終幕ー
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〈笑う棺桶〉が去って数分、〈索敵〉の外へと出たのか怖い顔をしていた二人は表情を緩めて、息を吐き出した。
目の前の危機が過ぎ去り、各々が武器を下ろして休む中、ひとりユーリは目に見えて疲労しており、地面にぐったりと倒れこんでいた。
「……だ、大丈夫?」
「ムリ、……っぽい」
小さく返事をし、ぐったりと犬耳が垂れる。 無理もないだろう。 途中からとはいえ、命を賭して、殺人鬼三人を相手取っていたのだから。 それこそ、迷宮区で出現するエネミーを何倍も苦しかったはず。
だから、こそ悔しい。 いつも彼の側に立って一緒に戦おうとこの世界に来た時から、決めていたのに……。 肝心な時は、いつもユーリ一人が背負ってしまう。無力な私が情けない。 だが、いつまでも悔しがっていられない。 心情を押し殺し、その上に明るい表情を貼り付ける。 地面に直に寝転ぶユーリの隣に腰掛けると、頭を持ち上げて私の膝の上に置く。 所謂、膝枕なる態勢に初めはユーリも慌てるがそれよりも疲労の方が勝ったらしく、目を閉じて眠ってしまう。
「……ありがとね、ユーリ」
「ん……」
ゆっくりと頭を撫ぜると、小さく身動ぎ、微かに頬が緩んだ。
後頭部越しに伝わる温かさに少しばかり微睡んでいると、突然足の上から重みと熱が消えた。 ハッとし、意識を覚醒させると起き上がったユーリが納刀されたままの鞘を手にし、丘の西側の斜面を睨みつけていた。 直ぐさま、〈索敵〉を行使するとプレイヤーを表す緑の光点が丘へと進んでいた。
まさか〈笑う棺桶〉が戻ってきたのかと考えたが、どうやら違うみたいだ。
ユーリが険しい顔で睨む中、暗闇から二人分の足音が響き、次第に大きくはっきりとしてくる。 まず視界に映ったのは、白と赤に彩られた騎士服を着た女性ーーアスナだった。 なぜか右の手には、透き通るような白銀の刃を持った細剣が握られている。 そして、彼女の剣呑な眼差しに追い立てられるかのように前を歩いていたのは、つばの広い帽子を被った長身の男性プレイヤーだった。
香港映画に出てそうな兇人を彷彿とさせる出で立ちの男は、まずシュミットを、次にヨルコさんとカインズさんを見てから言葉を発した。
「……やぁ、皆。 久しぶりだね」
「……グリムロック、さん」
人の良さそうな笑みを浮かべる男ーーグリムロックと呼ばれた男は、〈圏内事件〉を演出するために用いられた逆棘の武具を拵えたプレイヤーであり、ヨルコさん達以外に〈圏内事件〉のギミックを知っていたたった一人のプレイヤーでもある。
彼がグリセルダ氏を睡眠PKに見せかけ殺人し、それについて調べていたヨルコさん達とグリセルダ氏殺害の片棒を担がされたシ
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