第2章:埋もれし過去の産物
第41話「散り行く雪」
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
.!今度こそ、助けるって思っていたのに...!こんなの...こんなのってありかよ....!!」
「.........。」
思わず近くにあった木を殴り倒す。
「ぐっ...!?」
手から血が出る。...もう、身体強化の時間は切れている。
本来なら、立っているだけでもきついぐらい体はボロボロだ。
...でも、今はそんなの関係なかった。
「...ねぇ、ムート。もう一度言うよ?....私を、殺して。」
「っ.....。」
...できる訳がなかった。
僕はシュネーを助けたかった。でも、それは叶わずに死んでしまった。
二度生まれ変わり、もう一度チャンスが回ってきた。...なのに、また、無理なんて...!
「そん、なの....!」
「っ、私は!生物兵器として死にたくない!...ムートの幼馴染として...志導優輝の妹として死にたい!...だから、殺してよ....!」
絞り出すように否定しようとして、涙ながらに訴えられる。
「そんな事....!」
「....そっか、ムートはムートであって、志導優輝でもあるんだったね。...死なせたくない気持ちは、二人分だったね....。」
「っ.....。」
僕がムートとして、シュネーはシュネーとしてだったら、僕は覚悟を決めて殺していたのだろう。
...だけど、今は僕は優輝であり、シュネーは緋雪でもある。
...どちらも二人分だからこそ、殺したくない気持ちも多い。
「...シュネー・グラナートロートは、既に死んだ身。...だから、志導緋雪として言うよ。....今まで幸せだった。」
「っ....!」
今にも崩れそうな、そんな儚い笑みでそう言うシュネー。
「たった九年間。凄く短い期間だったけど、お兄ちゃんと一緒にいられて、本当に幸せだったよ。」
「緋雪.....。」
「ずっと頼りになるお兄ちゃんだった。ずっと大切な家族だった。....だからこそ、そんなお兄ちゃんの手で、私を今まで続いてきた苦しみから解放してほしい。」
そっと、振るえているリヒトを握る左手を両手で包む緋雪。
...その間にも、段々と体が灰になっていく。
「っ.....でも....!」
「シュネーの最期の願いくらい聞いてよムートっ!!!」
それでも諦められない。そう言おうとした僕の言葉を、シュネーはそう遮った。
...心が締め付けられた。どうしても、殺さなきゃいけない現実に。
「...もう、苦しみたくないの....お願い...ムート....!」
「っ...ぅぅ....!」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ