第三話 世界にもう一つの帝国が知れ渡る
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
かかる。だが、上空に映し出された演説によって、民主はアカツキ帝国という、我々から解放するという明確な目的を直接伝えたのだ)
それを民衆が信じるか信じないかを明確に答えるとすれば、信じないものが圧倒的に多い。それは、今まで帝国という国によって、どれだけの長い年月で他国の人間が敗れて搾取されたか、どれだけの長い年月で種族が差別されてきたかを考えれば、そんな夢物語などあるはずがないと思うが、それでもアカツキ帝国という明確に帝国と敵対行為を取ると判断した国家がいるとう認識を得てしまった。
(万が一にもアカツキという国が、攻めて我が国が劣勢である事になれば……)
これに協調して今まで支配してきた亜人達が、一挙に帝国支配地域にて反旗を翻し、属国となった国々も同じく違反するものが続出する可能性が高くなる。それを踏まえて、あのような手段で帝国民衆に演説を行ったケンタロウという王に、モルトは驚きが隠せないのだ。
(おのれ、このままでは終わらんぞ)
全ての国を種族を支配している唯一の国である帝国が、このまま未開地の帝国の思い通りに進むと思うなと、モルトは対アカツキ帝国戦に備えた戦略を考えるのだった。
「はあ〜疲れた」
場所は変わり、アカツキ帝国の前田健太郎の家。綺麗な日本庭園のある和風的な家が建っている事が特徴の家だ。雇っているお手伝いさんに声をかけた後に、自分の部屋に戻ると、布団にだいぶして、威厳ある彼の顔が、まるで残業で疲れはてたサラリーマンのような表情になっていた。
「戦争……書類の山……遺族年金、マスコミ対応……etc。」
そこには、アカツキ帝国国民から神の様に尊敬されている軍の最高責任者と、国の最高指導者の面影など全くなかった。そう、健太郎は十年たってもミリタリー好きな小心者の社会人でしかないと思っているのだ。だけど、自分をガチで慕ってくれる人間や他種族が沢山いるので、ぼろを出さないようにその威厳ある見た目と、ハッタリと演技で何とか誤魔化しているのだ。
全ては、失望されないように胃の痛い思いをしながらアカツキ帝国の王として振舞っている。
「くそ、今のうちに胃薬と栄養ドリンクを沢山買い込んでおくか……」
これからの事を考えると、気が滅入る健太郎だった。異世界に転移して10年たった現在でも、平和な日本で暮らしていた庶民的感覚はなくなっていない健太郎であった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ