マザーズ・ロザリオ-Fly me to the sky-
第百三話
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で向き合うように作られた丸テーブルは、まるでこの時のために作られたようで。
「ひよりはカウンセリング初めてでしょ? どうだった?」
「あんまり……体験したくはなかった、かな……」
「だよねー」
「ですよねー」
途中からの入学ということもあって、ひよりは初めてのカウンセリングだった。ただしその体験は、ひよりの柔らかい雰囲気に苦笑いの表情が浮かばせ、里香と珪子の同意の言葉が同時に放たれるものだった。そんなそれぞれの様子に小さく笑いながら、里香はヤケクソ気味に飲んだコーヒーを机に置くと、自身の髪の毛を弄りながら嘆息する。
「必要だってことは分かるんだけど……もう少し何とか出来ないかしらねぇ。アレ」
「あ! 里香さん、またです。髪の毛、痛んじゃいますよ?」
珪子が里香が弄り始めていた髪の毛を指差すと、ばつの悪そうに里香はその手の動きを止める。どうやら無意識かつやりたくないことだったようで、心配そうに茶色が交じった髪を見つめていた。もちろん現実世界でショッキングピンク、なんて色である筈もないけれど、こんな時はメンテナンスフリーな仮想世界が少し羨ましい。
「あっちゃー……最近何か、無意識にやっちゃって……」
「私、聞いたことがあります」
VR世界にいると男らしい口調になる、という妙な癖も現実で発揮されることはなく。ALOにいる時とは違う女性らしい語り口で、ひよりは里香を見てクスリと笑った。いつもその表情には微笑みが浮かんでいたが、その時はいつにも増して笑顔であり。
「好きな人の癖って移る、って」
「……え」
里香がひよりの言ったことを十全に自覚するには、少しばかりの時間を要した。最近の悩みの種である髪の毛を弄る癖は、言われてみれば翔希が困った時にする癖であり。つまり――
「めっ……迷惑な話ね」
「ごちそうさまです!」
そこまで考えが至ったところで、何故か珪子に拝まれてしまう。拝んでいるために垂れている頭にチョップを叩き込みながら、里香は照れ隠しついでに缶コーヒーを口に含んだ。
「……でも実際、翔希さんとはどうなんですかー?」
「それは私も気になります」
「別に……何もないわよ」
好奇の視線で見つめてくる二人から目を背けながらも、里香の口からは勝手に真実の言葉が紡がれていた。余計なことを言ってしまった、とばかりに里香は口を紡ぎ、珪子は不満そうに携帯端末を取り出した。
「……翔希さんに里香さん、どっちも照れ屋さんなのは分かりますけど。そんなんじゃ浮気……いや、それはないですね」
「翔希さんに限って、それはね」
そっぽを向いたままの里香をよそに、二人の話は盛り上がっていく。勝手に。そろそろ堪忍袋の緒が切れる――と、里
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