Side Story
少女怪盗と仮面の神父 8
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
無体を強いるなど、神父としても、人間としてもありえません」
それはそうだ。
アーレストの本性がどうであれ。
仮にも聖職者が一般民に手を出せば、村が騒ぎになるだけじゃ済まない。
宗教の性質上、国際規模で大問題になる。
普通に考えて、着任した翌日にいきなり自分の立場を危うくする愚か者がどこにいるというのか。
問題があるのは、教会を閉める時間まで礼拝堂で居眠りした挙げ句神父に抱きついて騒ぎ立てた、ミートリッテの短絡的な思考だ。
(ええ、ええ。アルフィンだって理解してそうな理窟なのに! 私が勝手な思い込みで無駄に警戒、そして自爆しただけ。悪いのは私なんです!!)
それに。
怪盗シャムロックとして挑んでおきながら、すっかり素のミートリッテに戻ってしまっていることも、余計に頭を混乱させた。
何重にも自己暗示を掛けてから教会へ来た筈なのに。
どうして今、シャムロックの意識が解けているのか。
おかげで、平静さがまったく取り戻せない。
「すみません、本当すみません! 尊厳を害する失礼なこ、と!?」
「ですから」
これまでにない経験で挙動不審に陥ったミートリッテの顔を。
アーレストの大きな両手が、ふわりと包み込む。
琥珀にもよく似た金色の、少し吊り上がり気味な両目が。
驚いて目をまん丸にしている子供の顔を静かに映した。
「どうか落ち着いてください。私の目を見て。良いですか? 私は、貴女を責めていません。謝罪の必要も感じません。そんな風に頭を下げられても、私には何を反省されているのか解らないので、却って対応に困ります」
「っ!」
綺麗な顔が、真剣な表情でまっすぐに自分を見ている。
整った容姿が間近で放つ迫力と言葉に気圧され。
ミートリッテは息を飲み、立ち竦んだ。
「貴女が私に抱きついたのは、微睡んで親しい方と間違えてしまったから。でしたら、それは不埒な行いではありませんよ。不用意だとは思いますが、地に額を擦り付けるほどの反省を要するものではない。相手が何者であれ、男性を警戒してしまうのも、女性の身であれば、ごく自然な防衛本能です。特に貴女のように実直で可愛らしい方なら、日頃から異性関係の話で心労が絶えないでしょう?」
いや、ですからね?
その軽口がこっ恥ずかしい自意識過剰系・勘違い暴言の素なんですけど。
と、真剣な表情を崩さない神父には、なんとなく言いにくい。
「貴女が何をそこまで思い詰めているのか、お話していただけない限りは、以後お気を付けて、としか言えないのです。ご理解ください」
謝罪は程々にしろというお説教か。
確かに、今のは神父に非礼を詫びている感じではなかった。
勢いで一方的に|
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ