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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 8
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ようございます?」
「────っっ!?」

 アーレストが困ったように微笑み、抱きついた自分を見下ろしている。
 理解した瞬間、声にならない叫びが礼拝堂内に溢れた。

「す、すすっ、すすすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません、わざとではないんです、勘違いなんです、人違いなんです! ご容赦くださいこの通りーっっ!」
「ええと……大丈夫ですよ。ご自身でどなたかのお名前を仰ってましたし、人違いされているのはすぐに分かりました。ですので、その……土下座とか必要ありませんから、せめて椅子に座り直していただけませんか?」
「とんでもないです、聖職者である貴方の身に不埒(ふらち)な行いをした私なんかが顔を上げられる状況じゃないです! 本っ当ーに! すみませんでした! 一生ずっと謝り倒しますのでどうか喰わないでください、お願いします! 硬いし薄いし小さいし、絶対に美味しくないです、私ーっ!」
「喰…… はい?」
「へ?」

 拍子抜けしたような、驚いて言葉を失った時のような声が耳を突く。
 思わず床に擦り付けた額を上げれば、アーレストの目が点になっていた。
 何を言われたのか分からない……そんな表情だ。
 その微妙な空気を読んだミートリッテは、またしても自分が、酷い失態を演じてしまったのだと気付いた。
 床での平伏姿勢から跳ね起きて、周囲の確認を瞬時に行い。
 ぶわわわわっと、耳まで真っ赤に染め上げる。

(誰も居ない、着衣に乱れもない、荷物を探られた様子もない、の、現状をよく(かえり)みなさいよ! どう見ても寝惚けた私に手出ししてないじゃない! アーレスト神父にその気が無いなら、遊び人疑惑まであえて口にしなくても良かったのに! 喰わないでとか自意識過剰で痛々しい! バカのお手本か私は!!)

 ステンドグラスの向こうはとっくに漆黒。
 女衆も引き上げた後。
 礼拝堂の中には、アーレストと寝惚けたミートリッテの二人だけ。
 燭台の灯りも、二人の周辺以外は落とされていた。
 女に手を出すなら絶好の機会だが、彼は、ミートリッテの失礼極まりない発言にも顔に疑問符を貼り付けて瞬くばかり。
 いつの間に寝ていたのかも含め、自分の間抜けぶりを海賊に対して以上に罵倒したくなった。

 『戦』の最中にうかうか眠ってしまうとか。
 これでは用意していた策が台無しだ。
 今後何をしたって、悩んでいる信徒には見えないだろう。

 失敗に重なる失敗で、情けないやら恥ずかしいやら。
 あれだけ気を抜くまい、油断するまいと意気込んでいたのに。
 なんたる無様。

「とにかく落ち着いてください。なにやら私のほうが誤解を与えてしまったようですが、ほぼ初対面である貴女に危害を加えるつもりはありませんし、女性に
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