Side Story
少女怪盗と仮面の神父 8
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んか?」
「とんでもないです! 聖職者である身に不埒な行いをした私なんかが顔を上げられる状況じゃないです本ッ当すみませんでしたごめんなさい! 一生謝り倒しますのでどうか喰わないでくださいお願いします! 硬いし薄いし小さいし絶対美味しくないです私ーっ!」
「喰…… ……はい?」
アーレストの目が点になる。
その微妙な間の空気を読んだミートリッテは、またしても自分が酷い失態を演じてしまったのだと気付いた。
床に平伏姿勢、からの、飛び起き自己周囲確認を瞬時に行い……ぶわわわわっと耳まで真っ赤に染め上げる。
(誰も居ない。着衣に乱れ無し。荷物を探られた様子も無い。の、現状をよく顧みなさいよ! どう見ても寝惚けてる私に一切手出ししてないじゃない! アーレスト神父にその気が無いなら、遊び人疑惑まで敢えて口にしなくても良かったのに! 喰わないでーとか、自意識過剰で痛々しい! 莫迦のお手本か、私は!?)
ステンドグラスの向こうはとっくに漆黒。女衆も引き上げた後。礼拝堂には、アーレストと寝惚けたミートリッテの二人だけ。燭台の灯りも、二人の周辺以外は落とされていた。
女に手を出すなら絶好の機会だが、彼はミートリッテの失礼極まりない発言にも顔に疑問符を貼り付けて瞬くばかり。
いつの間に寝ていたのかも含め、自分の間抜けぶりを海賊に対して以上に罵倒したくなった。
『戦』の最中にうかうか眠ってしまうとか……これでは用意していた策が台無しだ。今後何をしたって、悩んでいる信徒には見えないだろう。
失敗に重なる失敗で、情けないやら恥ずかしいやら。
あれだけ気を抜くまい、油断するまいと意気込んでいたのに、なんたる無様。
「……とにかく、落ち着いてください。なにやら私のほうが誤解を与えてしまったようですが、貴女に危害を加えたりはしませんし、無体を強いるつもりもありません」
それはそうだ。
本性がどうであれ、仮にも聖職者が一般民に手を出せば、宗教の性質上、国際規模で大問題になる。
普通に考えて、着任翌日にいきなり自分の立場を危うくする愚者が何処に居るというのか。
問題があるのは、教会を閉める時間まで居眠りした挙げ句神父に抱き付いて騒ぎ立てた、ミートリッテの短絡的な思考だ。
(ええ、ええ。子供のアルフィンでも理解してそうな理窟なのに、私が勝手な思い込みで無駄に警戒、そして自爆しただけです! 悪いのは私なんですー!)
それに。
怪盗シャムロックとして挑んでおきながら、すっかり素のミートリッテに戻ってしまっている事も、余計に頭を混乱させた。
何重にも自己暗示を掛けてきたのに、どうしてシャムロックの意識が解けているのか。おかげで、平静さが全く取り戻せない。
「すみません本当すみません! 尊厳を害する失礼なこ、とっ!?」
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