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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 8
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る。
 それでも
 「……ふた、り、の……っ……! 二人の子供に戻りたいよぉおおーッ!」
 家なんか無くなっても良い。お金は全部あげる。お気に入りの服も、おもちゃも要らない。
 だから、二人を返して。お父さんとお母さんを返して。
 どの時点の二人でも良いよ。返してくれるのなら、今度は笑うから。ずっとずっと笑って、二人に「ごめんなさい」じゃなくて、「大好きだよ」って言い続けるから。ちゃんと手を繋いで看取るから。
 笑っていられた三人家族を、私に返して。
 ……無理なのは、知っているけど。
 「私も……後悔はしたくないわ」
 静かに歩み寄った女性の両腕が、堰を切った悲鳴ごと少女の体を包む。
 「朝起きて、誰かと話して働いて遊んで、笑って泣いて怒って喜んで。合間合間に食事をして、夜は眠って……。たったそれだけなのに、どうしてこんなにも難しいのかしらね……?」
 うねる風と荒れ出した波の音、叩き付ける勢いが激しくなった雨に責められながら。
 泣き叫ぶ少女の首元に顔を埋める女性の肩も、震えていた。



 「……ッテさん。ミートリッテさん?」

 ぼんやりした視界に、金色の糸が数本垂れる。
 それは冷たい体を温めてくれた、大切な人の髪と同じ色。
 「……ハウィス」
 「え? あの、ちょ……」
 「大丈夫だよ……私が居るから……。ハウィスが許してくれてる間は、ずっと一緒に居るから……。今度は私が温めてあげる……。だから……ねぇ」
 覗き込んでいる相手の背中に座ったまま腕を回して、きゅうっと抱き締める。
 「……悲しまないで」
 白い衣にすりっと頬を寄せ……違和感を覚えた。
 (……あれ……? ハウィスにしては硬い……よう、な……)
 そういえば、自分は今、礼拝堂に居る筈。
 時間にしても場所柄にしても、ハウィスが教会に居る訳が無い。彼女もアリア信徒ではないのだ。
 ならば、この人は誰だ?
 細身ながら並の女性体とは異なる程好い厚みの筋肉を持っていて、少し低めの体温が気持ち良いこの人は。
 少しずつ冴えてきた思考でゆぅーっくり顔を上げ……相手を直視したと同時に ビギッ! と派手な音を立てて全身が凍り付く。
 「…………おはようございます?」
 「ーーーーッッ!?」
 抱き付いてしまったアーレストに困惑混じりで微笑まれ、声にならない叫びが礼拝堂内に溢れた。
 「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません! わざとではないんです勘違いなんです人違いなんですご容赦くださいこの通りーっっ!」
 「ああ、ええと……はい。大丈夫ですよ。ご自分でどなたかのお名前を仰ってましたし、人違いされているのは直ぐに判りました。ですので、その……土下座とか必要ありませんから。せめて椅子に座り直していただけませ
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