圏内事件 ー対決ー
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二度、三度と斬り結び、大きめの一撃が放たれ、衝突。 その際の衝撃で、二人とも大きく距離を取ると、武器を構えたまま睨み合う。 実力は拮抗して見えたが、その実多く消耗していたのはユーリの方だった。
「……はぁ、はぁ」
「なんだ、もうバテたのかよ」
「はぁ……お前こそ、傍観してるんじゃなかったのかよ」
「なんだそんなことかよ。 狩りは協力プレイが醍醐味だろ、そうゲームにもあるだろ」
片手で包丁を弄びながらそう言うPohはユーリに比べ、かなり余裕がある。
大きく息を吸い込み、呼吸を整えると、Pohへと向けていた刀を鞘へとしまう。 しかし、それは降参の意を示すものではなく、交戦。 犬耳をピンと立て、意識を自らを狩ろうとする殺戮者へと集中させる。
一方で、ダメージから回復したザザとジョニーも加わり、ユーリを三方向から囲み、包囲網をジリジリと狭めていく。 殺気が先ほどより濃くなり、緊張が一気に高まる。 しかし、この死合いが終わりを迎えたのはすぐだった。
一触即発の空気の中、どどどっ、どどどっと地鳴りのような音が響き、武器を下げ、皆一様に震源の方へと視線を向ける。
視界に捉えたのは、主街区から一直線に駆けてくる白い燐光だった。それが闇のような漆黒の騎馬の蹄を包む青い炎だと見て取れたのは数秒後の事だった。 そして、やはり騎馬の上には騎手が跨っており、夜の闇に白い光の軌跡を描きながら、猛烈の勢いで迫ってくる。
轢き殺さんばかりの勢いで殺戮者たちの包囲網へと突っ込むと、騎手は手綱を思いきり引き、急制動をかけた。驚いた騎馬が前脚を高く掲げ、騎手は耐えきれずに背中から真後ろへと転げ落ちた。
どすんっと尻餅をつき、「イテッ」と毒吐いた声にはやはり聞き覚えがあった。ズボンについた草を払い立ち上がった闖入者は、こちらを見ながら緊張感のない声を出す。
「ギリギリセーフか」
「んなわけあるかっ!」
思わず空いた手で闖入者の後頭部を叩いていた。イテテと頭をさする闖入者ーー〈黒の剣士〉キリトを見ながら、毒吐いた。
「遅いわ、馬鹿」
「はぁ? これでも超特急で来たんだぞ。 第一、お前……シュミットが危険だから来いとか、場所がわからねぇよ。 もっと詳しく書け!」
「察しろ。 おかげでこっちは殺されかけたわ」
事実、Pohとの交戦で総体力の一割ほどが削れている。突如、繰り広げられたまるで緊張感のないやり取りは、キリトがPohを視認したことで終わりを迎える。
「よぉ、Poh。 お前まだそんな趣味悪い格好してんのか」
「……貴様に言われたくねぇな。 それとその言葉お前の横に立ってる奴にも言ってやりな」
「……悪かったな、趣味悪くてよ」
なぜか巡り巡ってディスられたユーリの声には僅かながら
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