圏内事件 ー対決ー
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しっかりと彼らを見据え、言葉を切り出す。
「……どういうことか説明してくれますよね?」
「っ……はい」
沈痛な面持ちで返事をしたのは、ヨルコさんだった。 今の彼女は宿屋で会った時のように何かに怯えた様子はなく、淡々とこれまでの事を語り始めた。
「私達は、グリセルダさんの死の真相を知るために、リーダーの死に関して調べてる中でわかったことが唯一、シュミットが中層プレイヤーから、トップギルドの一員になったことでした。初めは、頑張ったんだなと思っていたんですけど、ギルドが解散してからDDAに入るまでの期間が短過ぎた。だから彼が怪しいと考えた私たちは、精神的に追い詰めて真実を話させようとしただけです。 決して彼を殺そうとか考えてたわけじゃないんです」
「なるほどな……」
「えぇ、ですから全て終わった暁には、迷惑をかけてしまった皆さんに全て話して、謝罪しようと思ってたんです」
そのために選んだのが、アイテム消滅時の演出を利用した〈偽装殺人〉。 彼女達が本当にシュミットを殺そうとしているわけではないと知れて、安堵した。
しかし、気が弛んだ瞬間、シュッと何かが風を切り、うめき声とともにシュミットの体が地面へと崩れ落ちた。
『なっーーー!?』
突然の出来事に皆が息を呑みこむ。 全員の視線が倒れ伏したシュミットーー彼の首筋に刺さったスローイングダガーに集まる。 半分ほど埋まった刀身は、緑色に濡れており、麻痺毒が塗ってあることが判断できた。 即座にポーチから結晶アイテムを取り出し、解毒をしようとするが再び投げられたナイフがユーリの手から弾く。 ダガーの飛んできた方向を睨みつけると同時に、甲高い声が無邪気に響いた。
「見たかよ、ヘッド! 俺のスローイング、最ッ高にクールだったろ!」
「あぁ、上出来だ、ジョニー」
「っ! ……お前らは!」
ダガーが飛んできた方向に顔を向ければ、通常のプレイヤーとは明らかに違う風格を身にまとった三人が佇んでいた。 その中で、ユーリの手から結晶を弾いたと思われる男が、自らの武勇をリーダー格と思われる黒いポンチョの男へと自慢していた。 そして、彼らの隣で髑髏マスクのプレイヤーがシュウシュウと不気味な笑い声を漏らしていた。
全身を闇に溶け込むかのような黒一色の装備に身に纏った彼らを意識すると同時に、頭上にカーソルが出現した。 しかし、その色はプレイヤーを示すはずのグリーンではなく、ーー所謂、犯罪者を示す色ーー血に濡れたかのようなオレンジ色。 そして、彼らの利き手の甲には、黒い棺桶から伸びた骸骨の腕、そして蓋にはニタニタと不気味な笑いを浮かべたタトュー。
ーー〈 笑う棺桶 〉
迷宮区攻略を目的とせず、プレイヤーを殺す
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