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北愛の受難
第一話 少女誘拐

[2]次話
暗闇の公園の中を、赤いポニーテールを靡かせて、
一人の女性が駆け抜けていく。

刻は既に午前2時。

もし他に通行人がいたとしたら、少々奇妙な光景に見えたかも知れない。
なぜなら彼女は、年齢16才、服装は、赤いゴスロリ。

どう見ても、こんな姿で若い女性が、
真夜中の公園を走っていくのは、普通ありえない光景であろう。
しかし、その女性自身は必死で走っている。
どうやら、どこからか逃げ出してきたらしい。

やがて、街灯の全くない木陰に向かって、滑り込んでいった。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

その女性は、息も絶え絶えという感じで立ち止まると、
木にもたれ掛かった。
彼女の名は岐阜。令制国でいえば美濃国だ。

美濃の呼吸が落ち着いてきた時だった。

「そこを動くなっ!」

突然、美濃のすぐそばから男性の太い声が響いた。

驚いた美濃はすぐに声の方に振り返った。
その途端に、美濃の腕が何者かに取り押さえられた。

その男は頭の上から爪先まで全身を漆黒の服で覆い尽くしており、
姿が良く分からない。

「こんな所に隠れて、無事に逃げられたと思ったんですか?甘いなぁ」

美濃は恐怖の余り、叫び声を上げようと口を開いたものの、
口を何か布のような物で覆い尽くされてしまい、声が出ない。

「あまり騒がないで下さいよ。面倒なことにしたくなければね・・・」

男はニヤリと笑った。
布には何かの薬品が染みこませてあるらしく、
強烈な刺激臭があり、美濃はそのまま気を失ってしまった。

男はそのまま美濃を抱き上げると、その場を後にして、
闇の中へ姿を消していった。

実はこの男は、暴力団の一員であり、
数時間前この公園の陰で、関係者に拳銃の密売を行っていたところ、

近くを美濃が通りかかってしまい、逃げ出した美濃をここまで追い掛けてきたのであった。
[2]次話


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