暁 〜小説投稿サイト〜
俺の四畳半が最近安らげない件
あの軍師 〜小さいおじさんシリーズ4
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を腰溜めに構え、人馬は陳宮に迫る。うわ、とうとう俺の部屋が殺人現場に!!…と覚悟しかけた刹那、槍は陳宮の衿のあたりを引っ掛けて屹立した。槍の先っぽでぶらんぶらんしながら細い悲鳴をあげ続ける、陳宮。


――えーと、なんだこれ。これは、まるで……


「………ストラップかな?」
「………卿は初めてか。戦場の呂布を見るのは」
端正がそっと二人の後ろに立つ。奴め、うまいこと陳宮に注意をそらして逃げて来たな。
「呂布が自分のとこの軍師をピックアップする時は大抵、槍だ。ぶっちゃけ話、陳宮が呂布に重宝された理由の一つはこの、槍で拾いやすいところだぞ」
「は!?」
「奴にとって自分の軍師を取られるのは、頭をもぎ取られるようなものなのだ。何しろ呂布が自分で下した判断はもう…歴史的にも稀に見るほど裏目に出まくってるからな…」
だから敵の武将に取られないように、槍に引っ掛けるのだと。…と呟きながら、端正が眉間に指をあてて首を振る。度し難い馬鹿の話をするときの、お決まりの仕草だ。最近気がついた。端正は自分よりキレる奴も嫌いだが、それ以上に理解に苦しむレベルの馬鹿を、異常に嫌う。…ちなみに白頭巾は逆で、その馬鹿さ加減を憐れむ振りをして娯楽として楽しむタイプの下司野郎だ。


「敵は何処だあぁあああああ!!!」


人馬が吼えた。なにこれ怖い。馬と合わせるとちょっとした土佐犬くらいのサイズはある。闘犬常勝レベルのものすごい土佐犬が借家で暴れるという悪夢のような状況。
「や、も、戻りましょう、敵はいません、いませんから!」
ストラップが叫んだ。…いい奴だな陳宮。白頭巾くらいは槍の錆にしてやってもいいのに。しかし呂布は、くいと手綱を引き絞り、白頭巾に照準を合わせる。そして叫んだ。
「貴様だなぁあぁあああ!!悪い奴の匂いがプンプンするわあぁあああ!!!」


―――すげぇな野生の勘。


二人が白頭巾からパッと離れる。流石にかばう気はさらさらなさそうだ。…ま、この性根のねじ曲がった白頭巾のことだ。死ぬことはないと思うが…。『石に齧りついてでも生き抜く意志』とやらを見せてもらおうか。
「おあぁぁああああああ!!」
白頭巾が槍の間合いに入ったあたりで尻がぞわっとした。やばいぞこれ、白頭巾まじで死ぬぞ。お、俺なら大怪我くらいで済むよな…腰を浮かせかけた瞬間、白頭巾と目が合った。制された…気がした。
「―――今です!!!!」
この男から発されたとは思えない大音声が耳をつんざいた。同時に白頭巾の隣の畳がぶわりと浮き上がり、小山のような何者かがのそりと起き上がった。『それ』は疾風のように両者の間合いに入り込み、朱の槍をはっしと受け止めた。鋼がギャリリと嫌な音を立て、火花とともに金臭い煙が渦巻いた。煙の中心に見えたのは、異様な人馬と…偉丈夫…
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ