あの軍師 〜小さいおじさんシリーズ4
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音が聞こえる……
「おや、この音は…」
「皆散れ―――!!これもうやばい、奴だ、絶対に奴が来る!!」
端正が猫ちぐらから飛びだしてきた。
「確実にか!?」
「おう、俺は蜀軍と共闘した際に、この音を何度も聞いた!俺の耳に間違いはない、これは赤兎馬の蹄の音だ!!」
「はて、赤兎馬なら関羽殿では」
白頭巾がくい、と首をかしげる。豪勢が白頭巾の顔面をアイアンクローの要領でがっしと掴んだ。
「たわけが!!赤兎馬はな、余が呂布から召し上げ、関羽殿に贈ったのだ!…呂布は元々、騎馬を得意とする北方の一族の出身。何だかんだで赤兎馬を一番うまく乗りこなしたのは……赤兎馬が、死後も共に居ることを選んだのは」
―――呂布、だったのだ
ドガゴッと鈍い音が響き、押入れの襖から朱の槍が突き出した。槍はぐぐ…と横に動き、強引に襖をこじ開けた。ていうかもう、俺ここ出るとき敷金返してもらえない。
「うぅぅぅ陳宮うぅああぁあぁああ!!!!」
白頭巾の掌から、羽扇が再び、ぽろりと落ちた。そしてそのまま立ち尽くし、うわごとのように呟く。
「なんだ…この…魔獣は…」
蘇芳をかぶったように紅い、悪魔のような四肢の獣?馬か?そしてその魔獣にまたがる、偉丈夫…というにはあまりにも人外な、流木のような両腕に巨大な槍を携えた巨漢。人と馬、というよりも人馬、と称するのがふさわしい一対の『魔獣』。
「こ、これは…赤兎馬、なのか?」
自分が羽扇を落としたことすら忘れ果てたように、ただぼんやりと人馬を見上げる。
「…私が知っている赤兎馬はこんな馬ではない…確かに大きかったが、もっとこう、普通に馬だった…」
「関羽殿では引き出せなかったのだ、あの馬の本当の魔性は。…さて、死にたくなければ逃げろ!!」
豪勢が走り出すと、呂布はくい、と方向を変えて赤兎馬に拍車をかけた。馬は怒号のような嘶きと共に豪勢に迫る。
「きっ来た―――!!!」
猫ちぐらから転びでて来た端正を目端にとらえた刹那、呂布は猫ちぐらに激しく衝突した。横なぎに吹っ飛ぶ猫ちぐらと、細い悲鳴。そこで初めて白頭巾が我に返った。
「…は。彼は一体、なにをしに出てきたのでしょうね。最初は陳宮、とか叫んでいませんでしたか」
「…最初は陳宮を取り戻しに来たのだろうが、恐らくもうその辺は忘れている」
ひとまずターゲットから外れ、肩で息をしながら豪勢が呟く。
「奴の膂力は三国一だがな、行動指針とかもう軸ブレッブレの迷走戦車だからな?戦の最中、敵の兵士に『横にいるやつ、こっちのスパイだぞ!!』て叫ばれたら脊髄反射で仲間に斬りかかるとかそんなレベルだぞ!?」
「なにそれこわい」
横倒しになった猫ちぐらから、陳宮らしき青白い細面の男が這い出してきた。
「わ…我が主…?」
「陳宮うぅぅううううう!!!」
巨大な槍
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