第五十五話 強かな男の狙い
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には帝国の皇帝がゴールデンバウムの血を引いていないとタイトルが書かれていた。表紙とタイトルがなんとも不似合いな事だ。
銀河帝国は皇帝エルウィン・ヨーゼフ二世がゴールデンバウム皇家の血を引いていない事を発表した。しかもDNA鑑定の結果も公表している。それが本当にエルウィン・ヨーゼフ二世のDNAなのかという疑問は有る。だがそれを除けば鑑定結果におかしな点は無かった。それが医学関係者の評価だ。
皇帝エルウィン・ヨーゼフ二世はゴールデンバウム皇家の血を引いていないのかもしれない。だがそれだけだった。皇帝エルウィン・ヨーゼフ二世は廃立されるわけでもなく今も皇帝の地位にある。そして帝国は混乱する事無く存在している。
おそらく彼はゴールデンバウム王朝最後の皇帝になるだろう。だがその皇帝が実はゴールデンバウム皇家の血を引いていないとは何と皮肉な事か。エーリッヒ・ヴァレンシュタインがゴールデンバウム王朝の幕を閉じる前に既に幕は閉じられていたのだ。
この問題に関しては同盟政府もはっきりしたコメントを出していない。エルウィン・ヨーゼフ二世が皇帝に相応しくないと言えば血統による皇位継承を認める事になる。ルドルフの遺伝子妄信を認めかねないのだ。皇帝に相応しいとは言えないが相応しくないとも言えない。
せめてエルウィン・ヨーゼフ二世に実力が有ればとは思っているだろうがそれを言えばヴァレンシュタインの簒奪を認めかねない。傀儡、しかも正当性の無い傀儡の皇帝。誰のための、何のための皇帝なのか。不思議な存在だ。こんな奇妙な存在がこれまで存在しただろうか……。
「それ、見てるんですか」
聞きなれた声だ。顔を上げるとヤンとアッテンボローが居た。
「休憩か、二人とも」
二人ともおかしそうに笑いながら同じテーブルの席に着いた。
「まさかキャゼルヌ少将がゴシップ記事に興味があるなんて思いませんでしたよ」
「ゴシップだと思うか、アッテンボロー」
「そう思いますね。簒奪する前にゴールデンバウム皇家の権威を落としておこう、そんなところでしょう」
アッテンボローが肩を竦めた。元々ジャーナリスト志望だからな、詰まらんゴシップ記事には拒否感が有るのだろう。だが……。
「俺はそうは思わんな」
二人が俺を見た。
「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン。嫌な奴だが詰まらん嘘を吐くような奴じゃない。DNA鑑定なんて簡単に出来る、嘘を吐いても直ぐばれるんだ。この記事、多分事実だろうな」
アッテンボローとヤンが顔を見合わせた。
「ヤン、お前さんは如何思う?」
「さあ、何とも言えませんね」
ヤンが髪の毛を掻き回した。
「ですが確かに嘘だとは決めつけられない。これが嘘ならちょっと底が浅過ぎるのは確かです」
アッテンボローは幾分不満そうだ。
「しかしこれが
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