第五十五話 強かな男の狙い
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雑な表情だ。でも明確に反対を表明する人間は居ない。傀儡の皇帝なのだ、その事を誰もが理解している。
「事実が表明されれば危険なのはそちらの方々です。いずれも後継者は女性ですからね、帝国を私物化する悪い宰相から姫君を助けだす。そして帝国を正しい姿に戻す。そんな事を考える馬鹿が出るかもしれません」
三人の顔が大きく強張った。そんな事になれば如何なるか、それを考えたのだろう。
「オスマイヤー内務尚書」
「はい」
「そちらの方々に警備、護衛の手配を御願いします」
「承知しました」
内務尚書が答えると最高司令官が頷いた。そして視線を三人に向けた。
「多少御不自由をおかけする事になりますが御理解頂きたいと思います」
「お気遣い有難うございます」
「御配慮感謝いたします」
「有難うございます」
三人の貴族が口々に礼を言った。多分警備、護衛と言うのは監視も含まれている筈。三人もそれを理解しているかもしれない。それでも不満を言わないのは誘拐されるよりはましだと思っているからだと思う。最高司令官を怒らせる怖さを彼らは良く知っている。
最高司令官はペクニッツ子爵とベルンハイム宮内尚書に残る様に指示を出すと会議を終わらせた。子爵と宮内尚書の顔が強張っている。二人だけが残る様に言われた、明らかに怯えている。あまり良い事とは思えない。
「ペクニッツ子爵、正直に答えて下さい。金銭的な問題を抱えていませんか?」
「は、あの、いえ」
ペクニッツ子爵があたふたしている。もう無理、諦めて正直に話なさい。
「金銭面での問題で馬鹿共に付け込まれても良いのですか?」
「実は、ぞ、象牙細工の……」
「借金が有るのですね。幾らです?」
「その、七万五千帝国マルクです」
情けなさそうに子爵が言うと最高司令官が頷いた。
「他には有りませんね」
「有りません」
「分かりました。宮内尚書、予備費から払って下さい」
「承知しました」
宮内尚書はほっとした様な表情をしている。子爵も情けなさそうだけどほっとしている。
「シュテルンビルト子爵家、ノルトリヒト子爵家には帝国政府から百万帝国マルクが年金として支給されています。ペクニッツ子爵家に何も無いと言うのは少々不公平ですね。いずれ時期を見て同じ待遇にしましょう」
「有難うございます」
あのね、喜んでるけど分かってる? 時期を見て、そう言ったでしょ。つまりその時期ってのはゴールデンバウム王朝が滅ぶ時だと思うんだけど……。気付いてないわね。これじゃ滅ぶはずだわ……。
宇宙暦798年 6月 13日 ハイネセン 統合作戦本部 アレックス・キャゼルヌ
お茶の一時、ラウンジに置いてあった週刊誌を手に取った。表紙は若い女性が微笑んでいる写真を使っている。しかしその表紙
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