外伝「鈍色のキャンパス」
W.Passacaglia
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たが、そこへ財布も携帯電話もあったからだと言っておったがのぅ…。」
「それで、警察の判断が失踪…ということになったんですね。」
「そういうことじゃ。何も持たずに一週間も不在となれば、やはり失踪とみなすしかあるまい。今朝早くにわしへ八百板から連絡が入ってな、わしが理事へと伝えてたんじゃよ。」
この話から察するに、笹岡は一度アパートへ帰っているようだ。財布も携帯電話もそこにあったんだからな…。
だが、それ以外何の痕跡も残さず消える理由は?争った形跡なんかがあれば誘拐ということも有り得ることだが、そういったものもないようだし…。もし本人の意思で全てを捨てたとしたら…いや、やはり解らないな…。
そもそも、この失踪を俺と関連付けるのには無理があるんじゃないか?彼は憎悪を露にしはしたが、消えようとする意思など微塵も感じられなかった。
だが…あの言葉、本当に言葉通りの意味だとしたら…?
俺は急に寒気を覚えた。
「藤崎君、大丈夫かね?」
宮下教授が心配そうに声を掛けてきたため、俺は「大丈夫です。」と答えはしたが、自分の内で"何かある"と本能が告げていた。
「宮下教授、実は…」
俺がそう話しかけた時だった。不意に、目の端に何かが写り込んだ気がした。
ドスンッ…!!
俺が気付いて振り向く前に、そこから鈍い音が聞こえた。すると、すぐさま内外から悲鳴が上がったのだった。
俺は何かが映った窓へと宮下教授と共に近づいて外を見ると…そこには人が倒れており、周囲には血が飛び散っていたのだった。
俺と宮下教授は慌てて外へ出て行って確かめると、それは…失踪していた笹岡だったのだ。
「なぜ…彼が!?」
地に打ち付けられて手足が間違った方向へ向き、顔も衝撃で歪んでいた…。そんな彼の前で、俺はそう呟くしか出来なかった…。いや、その場に居合わせた全員、彼の行為を理解できなかっただろう。
宮下教授は直ぐに救急に連絡を入れたが、目の前の彼には既に生気は感じられない。宮下教授も連絡を終えた後に笹岡の脈を取っていたが、ただ首を横に振って彼の死を告げるしか出来なかった…。
警察は彼の死を自殺と判断した。だが、どこからも遺書は見付からず仕舞いで、その理由を特定することは出来なかった。
彼が飛び降りたのは屋上だった。普段は立ち入り禁止になっていて鍵がかけてあるが、そのドアが抉じ開けられていたのだ。
しかし…彼はいつここへ現れ、どうしてわざわざ鍵がかけられている屋上から飛び降りたのか…。この建物は四階建てなのだ。四階のどこから飛び降りても即死する高さがある。だが、その理由は誰にも解らない。そして、その死の理由さえ…誰にも知る術はないだろう…。
笹岡の死を知って帰国した笹岡の母は、あまりのショックに暫くは茫然としていたという。
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