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藤崎京之介怪異譚
外伝「鈍色のキャンパス」
V.Sarabande
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 演奏会当日がやってきた。
 俺はこの日のため一週間で練習を行うことになり、サークルにすら顔を出す余裕もなかった。
 そんな俺のハードな練習に付き合いがてら、河内は毎日大ホールに来て俺の演奏をずっと聴いていたが、この日は彼もとある楽団の助っ人に駆り出され、どうしても来ることが出来なかった。
 まぁ…あれだけ聴いてたんじゃ、わざわざ来る必要もないと思うけどな…。
「京、頑張ってこいよ!そこはかとなく応援してっからよ!」
「そうだぞ?全くお前ってやつは…ホント予想外だよな。」
 …そこはかとなく応援って…なんだかなぁ…。
 今、目の前でそう覇気のない応援をくれたのは、言わずと知れた鈴木と小林だ。
 河内は既に大学から出ていて、ここに姿はない。
「はいはい…。それじゃ、俺は行ってくるよ。」
 俺はそう苦笑混じりに言って大ホールへと向かった。
 今日は吉田望という女流オルガニストが招かれている。彼女は世界的に活躍していて、今日は宮下教授の招きに応じて来てくれたのだ。
「相変わらず強引ですね。先生?」
「わしは何もしとらん。ただ、手紙を書いただけじゃ。」
「ホント、今も昔も変わらないんですから。あんな手紙寄越されたら、断るに断れないじゃないですか。」
「なにを言う。単に君を招待すると書いただけじゃぞ?」
「そう言って誤魔化してもダメですよ?学生時代のことをツラツラ書いて…。」
 楽屋に入ると、そこには宮下教授とドレスで着飾った女性がいた。女性はオルガニストの吉田望氏だ。どうやら二人は知り合いらしいな…。
 二人の会話を邪魔しないように、俺は静かにそこへ入った。すると吉田氏が俺に気付き、ニッコリ微笑みながら言ったのだった。
「初めまして。貴方が藤崎君?」
「はい。藤崎京之介と言います。」
「え?京之介って…それ、フルネーム?」
 この外見と不釣り合い…と言いたいようだな…。まぁ、フルネームではないが、日本にいる時は使いたくないからなぁ…。
「一応はフルネームです。」
「一応って?ミドルネームは何処かへ行っちゃったの?」
 真顔でそう言ってきた…。この人…何だか変…。本当にオルガニストか?
「吉田君、あまり揶揄わんでやってくれ。君は少しでも可愛い子を見ると揶揄うのは…昔からの癖だな。わしはそれを治せと言っとるに…。」
「良いじゃないですか!私は女ですもの!」
 今度は俺に助け船を出してくれた宮下教授に…。やっぱり変だな。もういい…それで良いさ。何でもいいから先に進めよう…。

 さて、この演奏会でのプログラムは、吉田氏がパッヘルベルとブクステフーデの前奏曲とフーガで三十分、宮下教授が前半スヴェーリンクの変奏曲、後半がヘンデルのチェンバロ組曲をオルガン演奏でやって四十分、そして俺がバッハのフーガとコラール編
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