外伝「鈍色のキャンパス」
I.Ouverture
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方が適してると思うんだがなぁ…。
ブランデンブルグ協奏曲第6番は、二つのヴィオラ・ダ・ブラッチョと二つのヴィオラ・ダ・ガンバが主体の協奏曲。低音楽器の響きが強調されるのだ。かなり渋い曲ではあるのだが…。
一通り演奏が終わると、俺達は一旦休憩することにした。各自楽器の調律をしたり、飲み物を手に談笑したりしていたが、ふと鈴木が俺に話し掛けてきた。
「京。お前、さっき樋口教授と外出てたろ?」
「…何で知ってるんだ?」
「俺さ、用があって中央棟に行ったんだけどさ、その時に京と樋口教授が出てくのが見えたんだ。何か相談でもしてたんか?」
鈴木は興味津々な顔付きでそう問った。それに対し、俺は答えるのを躊躇った。内容が内容だからな…。
こいつらはいつもこんな感じだが、人との約束は必ず守る。俺はそれを信頼し、彼らに話してみることにした。何か参考になるかも知れないしな。
「ほほぅ…それねぇ。俺らも感付いてはいたけどな。な、雄一郎。」
「まぁな。そりゃ知ってたってよりも、かなり噂になってるからなぁ…。」
話してみると、二人は驚くよりも今更と言った風に返してきた。
しかし…いつの間に噂なんて…。俺の知らないとこで、そんな話しが一人歩きするのはかなり困る。
「尤も、笹岡が一方的に京のことを敵視してるって内容で、京は全く相手にしてないって言われるけどな。」
小林が缶コーヒーを飲みながらそう言ったので、俺は些か顔を強張らせて問った。
「誰だ…そんな噂流した奴は…。」
すると、今度は少し離れたとこへいた河内がそれに答えた。
「俺も聞いたことあるぞ。出所は定かじゃないが、入学した始め頃には、もうかなりの噂んなってたかんなぁ。」
「そうそう。ま、京に限ってのことじゃなし、有名税みたいなもんだよな。噂は噂。気にする必要もないから言わなかっただけだし。」
河内の言葉に、そう小林が付け足した。
しっかし…俺が噂に疎いのが悪いのか?だが、噂を知ったとして、それでどうにかなるってことではないんだがな…。
そもそも、俺が笹岡を知らなかったんだから、知った所で首を傾げるだけだったろうし。
だが…この噂こそが彼、笹岡の中に渦巻いていた感情の表れだったのだ。それに気付くには、もう少し時が必要になる…。
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