暁 〜小説投稿サイト〜
藤崎京之介怪異譚
外伝「鈍色のキャンパス」
I.Ouverture
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
方が適してると思うんだがなぁ…。
 ブランデンブルグ協奏曲第6番は、二つのヴィオラ・ダ・ブラッチョと二つのヴィオラ・ダ・ガンバが主体の協奏曲。低音楽器の響きが強調されるのだ。かなり渋い曲ではあるのだが…。
 一通り演奏が終わると、俺達は一旦休憩することにした。各自楽器の調律をしたり、飲み物を手に談笑したりしていたが、ふと鈴木が俺に話し掛けてきた。
「京。お前、さっき樋口教授と外出てたろ?」
「…何で知ってるんだ?」
「俺さ、用があって中央棟に行ったんだけどさ、その時に京と樋口教授が出てくのが見えたんだ。何か相談でもしてたんか?」
 鈴木は興味津々な顔付きでそう問った。それに対し、俺は答えるのを躊躇った。内容が内容だからな…。
 こいつらはいつもこんな感じだが、人との約束は必ず守る。俺はそれを信頼し、彼らに話してみることにした。何か参考になるかも知れないしな。
「ほほぅ…それねぇ。俺らも感付いてはいたけどな。な、雄一郎。」
「まぁな。そりゃ知ってたってよりも、かなり噂になってるからなぁ…。」
 話してみると、二人は驚くよりも今更と言った風に返してきた。
 しかし…いつの間に噂なんて…。俺の知らないとこで、そんな話しが一人歩きするのはかなり困る。
「尤も、笹岡が一方的に京のことを敵視してるって内容で、京は全く相手にしてないって言われるけどな。」
 小林が缶コーヒーを飲みながらそう言ったので、俺は些か顔を強張らせて問った。
「誰だ…そんな噂流した奴は…。」
 すると、今度は少し離れたとこへいた河内がそれに答えた。
「俺も聞いたことあるぞ。出所は定かじゃないが、入学した始め頃には、もうかなりの噂んなってたかんなぁ。」
「そうそう。ま、京に限ってのことじゃなし、有名税みたいなもんだよな。噂は噂。気にする必要もないから言わなかっただけだし。」
 河内の言葉に、そう小林が付け足した。
 しっかし…俺が噂に疎いのが悪いのか?だが、噂を知ったとして、それでどうにかなるってことではないんだがな…。
 そもそも、俺が笹岡を知らなかったんだから、知った所で首を傾げるだけだったろうし。
 だが…この噂こそが彼、笹岡の中に渦巻いていた感情の表れだったのだ。それに気付くには、もう少し時が必要になる…。




[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ