外伝「鈍色のキャンパス」
I.Ouverture
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まり良い気はしないだろう…。
「樋口教授…そうは仰いますが、もし仮に…僕が彼と話し合ったとして、彼が素直に僕の意見を聞けると思いますか?あの憎しみの目…教授もお気付きと思いますが…。」
「それは分かっていた。だが…彼に影響を与えられるのは、今は君しかいないと思うのだよ。宮下教授は静観なされるようだが、今日のようなことが再度あれば、彼は大学に残ることさえ危うくなる。ただでさえ我々の指導を無視し続けているのだから、彼に単位を与える教授はいないだろうしな。」
樋口教授はそう言って再び溜め息を洩らし、冷めかけた珈琲を啜った。
この話から察するに、笹岡は…八方塞がりの状態に置かれているというわけか…。まぁ、本人が何を望むかにもよるが、このままではいけないのは確かだな。
「樋口教授。今すぐ…と言うわけにはいきませんが、少しずつ彼と話しをしてみます。間を置かないと、彼もきっと感情をコントロール出来ないでしょうし…。僕としても、何をどう話すべきか考える時間が欲しいですから。」
「それで良い。済まないが、彼を頼むよ。」
樋口教授は、そう言ってホッとした表情を見せた。今日の試験のことで、かなり精神を疲労させていたに違いないからな…。
この後、俺と樋口教授は少しばかり雑談をし、そのまま大学へと戻ったのだった。
俺は樋口教授と別れると、残る一つの講義に出席してからサークルへと向かった。だがその途中、俺はゲッソリした二人組に出くわした。言わずと知れた鈴木と小林だ。
「お二方、レポートは提出出来ましたか?」
俺がそう笑いながら問い掛けると、二人はギロッとした目付きで答えた。
「出した…出したさ…。徹夜した上に大学来てまで書いて…さっき提出したさ…。」
「そうだ…これでやっと解放されるってもんだ…。」
いやぁ…これは解放ってより、むしろ呪縛から逃れた…と言った方がいいかな…。
専攻が悪いのか教授が悪いのか…はたまたこの二人の運が悪いのか…。レポートだらけなんだよな…こいつら。ま、それだけ目を掛けられてるんだけどさ。
「で、これからサークルに行くつもりか?その凶悪な顔付きで?」
「そうだ…。昨日から全く楽器に触ってねぇからな。今日はおもいっきり遣るゼ。」
「そうだとも!ここは音大なんだから、演奏せねばダメなのだ!」
「あのねぇ…。そんな目の下クマ作ってまでやったって仕方無いだろ?二人共、家帰って寝ろっての…。」
二人の呆れた言い訳に俺が溜め息混じりにそう言うと、二人は先にも増して凶悪な目付きになって叫んだ。
「何を言っている!何のための音大だ!」
「そうだそうだ!ここは音楽のためにある!」
いやぁ…意味不明だ…。ってかこの二人、もう壊れてるんじゃないか?いや…元からこうか。よし、ここは放っておこう。
「じゃ、俺は行くから。
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