last case.「永遠の想い」
〜epilogue〜
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面に過ぎません。人の価値は、その人生全て…。」
「そうだね。だから私は…彼と生きる。この人生を彼に捧ぐ…なんて重いことは言わないが、彼を…陸を忘れることは絶対に出来ない。」
俺はそう言って笑った。それしか出来なかった…。
未だ二年しか過ぎてはいない。立ち直るには時間が足りてないことも事実だ。
あの事件では陸だけでなく、アウグスト伯父も亡くなり、他の顔見知りの人達も多く逝ってしまった。二年では到底傷は癒えない…。
田邊君はそんな俺を気遣ってか、何も言わずに再び青空へと視線を変えた。
そうした静寂の中、廊下からドタバタとこちらへ向かってくる音があり、その音はこの部屋の前で止まった。かと思ったら、ノックも無しにいきなりドアが開かれたのだった。
「お兄様!」
そこにいたのた、俺の妹の美桜だった。それも何だか怒っている様で、ドアも閉めずにズカズカと俺の前へと来た。
「何だ。お前、日本にいたのか。」
「何だじゃありませんわ!何でこんなにスケジュール入れてるんですか!」
「久しぶりだと言うのに、随分なご挨拶だなぁ…。」
俺も田邊君も苦笑した。田邊君は数回会っているが、まぁ…どれもこんな感じだったからなぁ…。
「で、今日は何かあって来たのか?」
「私が久々に帰国してみれば、お兄様…家を売り払われたそうじゃないてすか!」
「それかぁ…。別に引っ越しただけで、これと言って困ることじゃないだろ?」
「そう言う問題ではありませんわ!折角お顔を見に伺ったら、表札に“柏"なんてあるんですもの…。早く言ってほしかったですわよ…。」
そっか…それで怒ってた訳だ。要はいじけてたってことだな…。
「済まないな。色々考えた結果、大学近くに良い家があったから引っ越したんだよ。そこだと空港へ近いし、何かと便利だからな。」
俺は苦笑しつそう言ったが、美桜は未だ不服気な表情を見せていた。
すると、そこへ田邊君が恐々と美桜へと問い掛けた。
「あのぅ…美桜さん。今日は何かご用があっていらっしゃったのでは?」
美桜はそう問われるや、ハッとして持っていたバッグから大きな封筒を取り出した。
「これを渡しに来たのでしたわ。」
美桜はそう言って、その封筒を俺に手渡した。
「これは?」
「奏夜からですわ。二年近くかけて少しずつ書いていたようですわ。」
書いていた…?するとこれは楽譜ってことだろうと考え、俺は封筒から中身を取り出した。
それは手書きの楽譜で、端がきちんととめてある。その表紙には“MASS"の文字が見て取れる。俺はそれをめくり、自分の目を疑ってしまった。
奏夜は作曲家だ。その専門は現代音楽全般で、ドラマや映画音楽も手掛ける。その他、室内楽から管弦楽、鍵盤、弦楽、木管なんでもござれだ。
だが、ここにあるのはバロック風の
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