last case.「永遠の想い」
Z 同日 PM3:41
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かった。寧ろ…貴方の所有物でありたかった…。貴方の温もりが欲しかった…。たとえそれが罪だとしても…貴方だけに愛されたいと…ずっと思っていたんです。けれど…告げれば全て消え去ってしまう。それを分かっていたから…貴方の傍に…ずっと貴方の横に立っていれたらと…。」
そこで田邊は言葉を区切り、まるで在りし日々を思い出すかの様に空を見上げた。
「あの時、河内さんが僕を突き飛ばしてくれければ、三人もろとも瓦礫の下敷きになってました。河内さんも…貴方の一番でありたかったんだと思います。でも僕とは違い、貴方の音楽の友として、親友として一番でありたかったんです。きっと…一番じゃなければダメだと思ったことが…罪だったのかも知れません…。」
田邊は…泣いていた。俺は彼のそんな顔…見たことなんてなかった。
自分との葛藤…これから消え逝く者の後悔…。
「嫌だ…嫌だ!田邊、逝くな!」
俺は声を上げた。もう…大切な人を失うのは嫌なんだ。
これはただのエゴかも知れない。今、田邊を彼が思うような対象として見ることは出来ない。それでも…彼を喪うことなんて考えられない…。
「先生…いえ、京之介さん。その言葉だけで充分です。」
そう言うや、微かに浮かんでいた田邊の姿は淡雪の様に消え去ってしまった。
すると、田邊の肉体を支配している悪霊が、今まで以上に苦しみの声を上げた。
「止めろっ!」
もはや立つことも出来ない様で、悪霊は床の上でのたうち回っていたが、そこに冷静な田邊の声が響いた。
- もう終わりです。さぁ…ゆきましょう。 -
それは先と同じく、頭の中へと直接響く様な声だった。だが、俺はそれを聞いて直感して叫んだ。
「止めるんだ、田邊!そんなことしたら…」
- これで良いです。これで…。 -
そう聞こえたかと思うや、田邊の肉体は苦痛から解放されたようにスッと立ち上がり、壁の上へと飛び乗った。
俺とメスターラー氏は田邊を止めようと駆け出したが、駆け寄るより早く彼はその手をすり抜け、その身を空へと投げ出した。
「陸っ!」
俺は彼の名を叫んだ。落ち行く彼は、その顔に至福の笑みを浮かべたが…。
「見るな!」
彼が地へと激突する瞬間、メスターラー氏が俺を引き寄せた。
「君に…これ以上の傷をつける必要はない。」
メスターラー氏は俺を抱き、そう呟いた…。
どれだけそうしていただろう…。俺とメスターラー氏が座り込んでいた所へ、宣仁叔父が駆け付けて来てくれた。
「叔父様…。」
「解っている。彼は…逝ったよ。悪霊を道連れにな。」
そう言って、宣仁叔父は静かに俺の前へとしゃがんで言った。
「京之介。悪霊共は人の心や体を操るだけではない。こうして大切な者を奪い、自分の所へと引き寄せようとしている。お前は…耐えられるか
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