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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
Z 同日 PM3:41
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めていたんだ…。
「どうだい?それを私が全て奪ってやった。憎いかい?殺したいほど憎いだろ?」
 いけない…これは奴の罠だ。だが、そうと分かっていても、自分の心は偽れない。
 俺は正直、腸が煮えくり返る程だった。田邊の体だけでなく、その精神までも汚した奴を、俺は到底許すことなど出来ない…。
 今まで、俺の中にこんな感情があるなんて思いもしなかった。だから…それを抑え込む自身が…俺にはない…。
 だがその時、不意に頭に直接声が響いた。

- 先生。僕はどんなに汚されても、貴方を救えるのだったら喜んで汚されます。貴方の芸術が守れるのだったら、僕は永遠の滅びさえ受け入れます。 -

 その声は…田邊のものだった。目の前にいる薄汚い獣でなく、本物の田邊の声…。
「田邊…?」
 俺がそう呟いた時、目の前で奴が苦しみ出した。
「クソッ!何故だ!?あんな役にも立たない男の前で、何故だ!?他の人間共を犯している時は、お前は表に出ようともしなかったってのにっ!」
 奴の顔は苦痛に歪み、全身から汗を吹き出しながら膝をついた。
 その様子から、俺は田邊が中で戦っているのだと感じ、再び「田邊。」と呼んで近付いた。すると、奴はカッと目を見開いて叫んだ。
「寄るな!」
 奴はそう言うや立ち上がり、そのまま部屋を飛び出したのだった。
 俺は奴を追って駆け出し、その後を見失わぬように走った。だが奴の足は速く、直ぐにその影を見失ってしまったのだった。
「藤崎君!こんなところで何をしてるんだ!?」
 俺が立ち止まって奴を探していた時、向こうからメスターラー氏がやってきてたため、俺はそれまでの経緯を彼に話した。
「向こうから私が来たとき、それらしい姿は見なかった。だとしたら…上だな。」
「鐘楼…!」
 この中央大聖堂の最上階には、三つの鐘がついた大きな鐘楼がある。逃げるには不向きとも思えるが、恐らくは当たりだ。下には聖職者が山ほど居り、いくら悪霊でも全員を相手には出来ないだろうしな…。
 俺とメスターラー氏は、すぐさま鐘楼へと走った。奴が何を考えてるかなんて知る由もないが、兎に角追い付かなくてはならないのだ。
 俺達は数分もせずにそこへ辿り着くと、そこに奴はいた。
 そこは他の教会などの鐘楼よりもかなり広い。何故このように広く作られたかは知らないが、端には腰より少し低い壁がある。それを見て俺は、まるで城にある塔の様だと思った。
 その中で、奴は蒼い顔をして壁に寄り掛かっている。
 俺とメスターラー氏は、暫く奴と睨み合っていたいたが、全く攻撃を見せる素振りは見せなかった。
 それはまるで止まっているような…。そう、何もしないのではなく、何も出来ないのだ。
「そうか…叔父様達が…。」
 下では音楽が始まったのだ。耳を澄ませば、各建物から響く声
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