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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
X 5.11.AM5:37
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既に異常であることに気が付いた。鳥の囀ずりや虫の声が全く聞こえてこないばかりか、風向きによっては異様な臭気が鼻を突いたためだ。
 俺はメスターラー氏と顔を見合せ、足早に先へと急いだ。
 そうして目的地へと辿り着く頃、臭気は気分が悪くなる程に強くなっていた。
「これは…!?」
 鬱蒼と生い茂った木々が切れたかと思った刹那、俺達はそこで異様な光景を目にした。
 そこで目にした光景とは…崩壊した修道院と、無惨に打ち捨てられた修道士…いや、修道士だったものたちの残骸とでも言おうか。その亡骸は引き裂かれ、あちこちに散らばっていたのだ。それをカラスが啄み、その遺体の大半は腐敗して虫がわいていた。異臭源はこれだったのだ。
 修道士達には悪いのだが、正直、不気味さや恐ろしさを通り越して気持ち悪さが先行してしまう。
 俺とメスターラー氏はその亡骸と瓦礫との間を歩き回り、事態を把握するための手掛かりを探した。
 しかし…そこはまるで地獄の様で、瓦礫と屍肉と、そしての屍肉を貪る鳥だけしか無い。それだけが支配している世界なのだ…。
 そこには以前、きっと小鳥の囀ずる閑な場所であったに違いない。だが今、目の前に広がるのは死の世界であり、そこに生の息吹きを感じることなど出来はしなかった。
「一体…どうしてこんなことに…。」
 俺が立ち止まってそう呟いた時、ふと目に止まった瓦礫が動いた気がした。俺は不思議に思い、その場所へと行った。
「藤崎君、何か見付けたのか?」
 俺が動いた時、メスターラー氏はそう言って俺のところへときた。俺はさっきのことをメスターラー氏に話、取り敢えずその瓦礫を退かしてみることになった。
 動いたであろう瓦礫の前に来ると、俺達は上から順に瓦礫を退かした。結構な量があったために時間が掛かったが、途中から人の声らしき音がしたため、俺もメスターラー氏も先を急いで瓦礫を退けると、その下には頭から血を流した修道士が倒れていた。その地面には、丁度人一人が入れる様な穴が空いていたため、この修道士は助かった様だった。
「大丈夫ですか!?」
 俺は彼を抱え起こして問ったが、彼の顔面は蒼白で虚ろな目をしており、何かを答えられる状態でないことは一目瞭然だった。
 一先ずはもう少し良い場所へ彼を移そうと、俺とメスターラー氏は二人で彼を草の上へと運んだ。瓦礫の中よりは多少マシという程度ではあったが…。
 そこで再度彼の怪我の状態などを確認してみたが、かなり重症であることが分かった。頭を打っているらしく、かなり出血があったようだ。傷口は小さく出血は止まっているものの、一刻も早く手当てしなくてはならないのは分かった。だが、メスターラー氏が呼んだ救急は後十分ほど掛かる様で、その間は脈を取ったり話し掛けたりするのが精一杯だった。
 その彼だが、何かを言っている風
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