暁 〜小説投稿サイト〜
藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
U 4.25.PM6:57
[1/8]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 俺はメスターラー氏に誘われ、奏夜と共に三人で町へ出ていた。
 奏夜がこちらへ来てから十日以上経つが、これといって進展はない。
「兄貴。こんだけ調べて何も出てこないなんて…返っておかしくないか?」
「まぁ…な。だからといって、ここで慌てても空回りするだけだ。」
「そりゃ…分かってるけどよぅ…。こう何も無ぇんじゃ、俺は何を報告すりゃ良いんだ?」
「それは自力でどうにかしろ…。こっちだって何も分かってないんだし、ゴッドフリートの妻の遺体すら見付かってない。警察に一応は遺体盗難の届けは出してあるが、先ず見付からないだろうしなぁ。」
 メスターラー氏にも全て話してあるが、彼も同意見だった。
「この件も、私は人智を越えたものだと思っている。だが、あれだけ騒ぎを起こしておきながら、ここへきて何も無いとは…どうかとも思うんだがねぇ…。」
 俺達の会話に、前を歩いていたメスターラー氏が答えた。
 俺達もそうは思ってはいるが、それを解く鍵が全くもって見付からない。メスターラー氏もそれは分かってる筈だが、言わずにはいられなかったのだろう…。
「私は暫くこの町を離れますから。」
 いきなりそう言われ、俺達は面食らった。
「どうしてですか?」
「いや、この町の周辺は一通り調べ尽くしたから。後は関連性のあるケルン、ライプツィヒ、それにベルリン辺りを回り、類似事件がないかを調べようとね。」
 彼にそう言われ、俺は少し訝しく思った。何故なら、彼はもうその周辺を調査しているのだから。
「確か…そこはもう調査済みでは?」
 俺の考えが読めたのか、奏夜がメスターラー氏に問い掛けた。メスターラー氏はその問いに苦笑しつつ答えた。
「全て調べられた訳ではないんだ。前回はあまり時間が無かったんで、今回は調べきれなかった部分を調査してこようと思ったんだよ。」
 確かに…前回は大急ぎで情報収集せねばならず、腰を据えて調査…などと悠長なことは言ってられなかったからな…。
「どのくらいで戻られますか?」
「一週間程でどうにかなるだろう。一応連絡はいれるが、こちらで何かあれば直ぐに連絡してほしい。ま、無いに限るがな。」
「分かりました。」
 俺がそう返答した時、黙っていた奏夜が口を開いた。
「俺も同行していいか?」
 そう言われたメスターラー氏は、最初困った表情を見せた。
 以前にも言ったが、メスターラー氏は大学教授でもある。そのため、奏夜が一緒だと何かと都合が悪いこともあるのだろう。
 メスターラー氏は古文学、考古学の教授であり、それで教会や聖堂の古文書にも触れられる。そこへ奏夜がついて行ったのなら、閲覧に規制がかかる可能性がかなり高い…。
 それを知ってか、奏夜はニッと笑みを見せて言った。
「こっちにも多くの知人がいる。ケルンにもライプツィヒに
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ